新たなアレンジで浮き彫りになるエリントンの魅力
まごうかたなき日本ジャズ・シーンの重鎮であるのに、“ジャズ”という枠で括ってしまうことがなんとなくためらわれてしまうのは、この人のスタンスがあまりにも自在で軽やかで柔軟だからだろうか。渋谷毅。東京藝大作曲科在学中の1960年代初頭から現在にいたるまで、ジャズ、歌謡曲、映画、CM、童謡等々多岐にわたるジャンルで活躍し続けるピアニスト/作編曲家/バンドリーダーである。
そんな渋谷が、敬愛してやまないデューク・エリントンの生誕120周年を記念したコンサート「エリントンDE行こう」をおこなう。過去にもエリントン楽団のレパートリーを演奏するユニット「エッセンシャル・エリントン」を結成し、3枚のアルバムを残している彼だが、その傾倒ぶりは年を追うごとにますます深くなっているようで、今や「もうエリントンしか聴かない!」と宣言するほど。今回は長年にわたって彼と活動を共にしてきたミュージシャンたちを率いて〈A列車で行こう〉や〈キャラバン〉〈ソフィスティケイテッド・レディ〉など名曲の数々を自ら編曲し、コンサートの副題にもなっている「21世紀のエリントン・ミュージック」を披露する。
ジャズの歴史上最大の重要人物の一人であるにもかかわらず、ジャズ・ファンですら近づくのを尻込みしてしまいがちなエリントン。このコンサートは、そんなジャズ・ジャイアントの音楽を解き明かし、その魅力をエッセンシャルに示してくれるに違いない。
文:藤本史昭
(ぶらあぼ2019年3月号より)
2019.3/5(火)19:00 渋谷区文化総合センター大和田さくらホール
問:渋谷区文化総合センター大和田 ホール事務室03-3464-3252
https://www.shibu-cul.jp/