大胆かつ繊細、時空を超えた先鋭的なアプローチを続ける若き鬼才ピアニスト、佐藤祐介が、19世紀初めにヨーロッパ中で人気を博したボヘミア出身の作曲家、ヨハン・ラディスラウス・ドゥセク(1760〜1812)に対峙した。その作風はメロディアスかと思えば、厳格な対位法に基づいたり、意表を突いた転調を伴ったりと独創性の極み。佐藤は技巧に任せて弾き飛ばすようなことをせず、フレーズひとつにも気持ちを込めた丁寧なアプローチで、今日ではほとんど顧みられなくなった作品群へ新たな命を授ける。特に、ソナタ「祈り」の緩徐楽章での、余韻の残る優しいタッチが、聴く者の琴線に触れる。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2019年3月号より)
【Information】
CD『ドゥセク:「祈り」〜ピアノのためのグランド・ソナタ/佐藤祐介』
ドゥセク:ピアノ・ソナタ第29番、グランド・ソナタ〜ピアノのための「祈り」、「12の段階的なレッスン」より
佐藤祐介(ピアノ)
カメラータ・トウキョウ
CMCD-28363 ¥2800+税