20世紀以降のいわゆる“現代音楽”においても、美しい旋律、心地よいハーモニーは絶えることなく希求されている。 “浸れるクラシック”を探しているリスナーにこそお勧めしたいのが、「ナイマン、グラス&ラフマニノフ」だ。
イギリスのマイケル・ナイマンは、同一のリズムパターン上で刻々と移り変っていくミニマル・ミュージックを映画音楽に応用し、1993年公開の映画『ピアノ・レッスン』をヒットさせ、世界的に知られるようになった。その音楽を、4楽章の堂々たるコンチェルトに仕立てたのが「ピアノ協奏曲」。大管弦楽をバックに歌われる雄大な〈楽しみを希う心〉のメロディが沁みる。
アメリカの代表的ミニマリスト、フィリップ・グラスからは、ヴィヴァルディの「四季」を下敷きに、アメリカのヴァイオリニスト、ロバート・マクダフィのために書かれたヴァイオリン協奏曲第2番「アメリカの四季」。ヴァイオリン独奏部と合奏部が交互に、リズミカルに現れる。
最後を締めるのが、“遅れてきたロマン派”などとも称されるセルゲイ・ラフマニノフの代表作「交響曲第2番」。耽美の極致を行く濃厚な旋律が、管弦楽の骨太のサウンドを背景に歌われる。交響曲の醍醐味と現代性を一つながらに体験させてくれる曲だ。
神奈川フィルを指揮する湯浅卓雄はナイマンとも交友が深く、現代の音楽の特性を知り尽くしている。才色兼備の二人のソリスト、ピアノのアンナ・フェドロヴァ、ヴァイオリンの南紫音は、今後の活躍を約束されたライジング・スターたちだ。寄せては返す心地よい波動で、耽美の世界へとあなたを誘ってくれるだろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2019年3月号より)
billboard classics
ナイマン、グラス & ラフマニノフ premium symphonic concert
2019.3/2(土)14:30 Bunkamuraオーチャードホール
問:パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831
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