アンジェラ・ゲオルギュー & トーマス・ハンプソン

世界最高峰の歌と声の魅力に全方位的に酔いしれる一夜

左:アンジェラ・ゲオルギュー ©Sasha Gusov
右:トーマス・ハンプソン ©Jiyang Chen

 大変な二人である。METやウィーン国立など超一流歌劇場のここぞというガラに欠かせないバリトンのハンプソン。英国ロイヤル・オペラの《椿姫》で衝撃を与えて以来、世界の一線を走り続け、日本でも一昨年、《トスカ》で近年例がない長いカーテンコールを浴びたソプラノのゲオルギュー。ソロで聴いても贅沢なのに、デュオ・コンサートが実現する。それも世界に先駆けて一夜だけ。

 ハンプソンは1曲目の《エロディアード》から、ロマンティックな美声に酔わせてくれそうだ。《マクベス》や《オテロ》のアリアで、屈折した心情を深く掘り下げるだろう。また、ジャズのスタンダード・ナンバーにも期待。ゲオルギューは得意の《アドリアーナ・ルクヴルール》のほか、十八番の《トスカ》の〈歌に生き、愛に生き〉も歌う。客席の喝采が今から聴こえるようだ。

 デュエットでも畳みかける。《シモン・ボッカネグラ》の父娘が再会する二重唱で胸がいっぱいになり、《道化師》の二重唱では不倫カップルの甘くスリリングな駆け引きに、心が高鳴りそうだ。そのうえ数々のミュージカル・ナンバーというデザートを堪能し、《メリー・ウィドウ》のハンナとダニロの二重唱という極上の食後酒にまであずかれるとは、なんたる贅沢。手練れのユージン・コーンは東京フィルを指揮して、彼らの息にピタリと合わせてくるはずだ。
 思い出すのは、かつて大ブームになった「三大テノール 世紀の競演」。歌と声の魅力にだれもが酔いしれたあのコンサートの“後継”と言ったら言いすぎだろうか。
文:香原斗志
(ぶらあぼ2019年3月号より)

アンジェラ・ゲオルギュー & トーマス・ハンプソン
スペシャル・コンサート イン ジャパン 2019
2019.3/6(水) 19:00 サントリーホール
問:チケットスペース03-3234-9999
http://www.ints.co.jp/

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