【CD】きざし〜美しきままに 二十五絃箏〜 /山本亜美

 通常の箏の倍近い絃を持つ二十五絃箏は野坂操壽によって開発され、彼女がさまざまな作曲家とコラボすることで可能性が開かれた。今、この道を力強く進めている実力者が山本亜美だ。自身の委嘱作5曲を収めた本ディスクは、その現在を鮮やかに伝える。井上鑑「Sound After〜」では英語のテキストを箏に乗せて歌い弾く。高橋久美子「萌」はギターをつま弾くようにはじまるが、どんどんと深みを増していき、この楽器の幅広い音域と表現力を逆説的に伝える。現代音楽というジャンルのみならず、邦楽特有のイディオムからも放たれ、箏が世界言語をしゃべりはじめた。国内のみならず広く聴かれるべき一枚。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2019年2月号より)

【information】
CD『きざし〜美しきままに 二十五絃箏〜 /山本亜美』

沢田穣治:“truth” in the dark/井上鑑:Sound After The Silence/溝入敬三:茉莉花〜二十五絃箏のための〜/森亜紀:リバーブレーション/高橋久美子:萌(きざし)〜二十五絃箏のための〜

山本亜美(二十五絃箏)

コジマ録音
ALCD-120 ¥2800+税