日本チェロ界の代表的名匠、山崎伸子が約10年にわたりその至芸を披露した「チェロ・ソナタ・シリーズ」。全10回中6回で弾かれたバッハ無伴奏のライヴ録音は、張りのある音色と力みの抜けた深い表現の両立がすばらしく、穏やかな佇まいからバッハへの熱い敬愛が滲み出る。特に各曲のサラバンドの渋い味わいは、一朝一夕には達し得ない境地だろう。また、曲順は調関係が自然な流れになる並びになっていて、録音は長期なのにアルバムとしては1回のライヴのような趣向に。ユニークかつ思考を刺激する妙手だ。なお、4曲はすでに閉館した津田ホールでの演奏で、感慨もひとしお。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2019年2月号より)
【information】
CD『J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲(全6曲)』
山崎伸子(チェロ)
収録:2008年11月、津田ホール(ライヴ) 他
ナミ・レコード
WWCC-7885〜6(2枚組) ¥3000+税