オペレッタ序曲特集で二人の作曲家のアニバーサリーを寿ぐ
東京シティ・フィル2月の定期演奏会は、下野竜也の指揮で、19世紀後半のウィーンに縁のある作曲家が取り上げられる。ウィーンでオペレッタが爆発的に流行したのは、1850年代後半にオッフェンバックの作品が上演されたことがきっかけ。その流行を受けて、スッペ、ミレッカー、J.シュトラウスⅡの3人が競って作品を発表し、ウィンナ・オペレッタの黄金期「金の時代」が作られた。
今回は、2019年が生誕200年となるオッフェンバックとスッペの序曲が特集される。フレンチカンカンで有名なオッフェンバック《天国と地獄》序曲やスッペ《軽騎兵》序曲といった誰もが耳にしたことがある賑やかな曲を中心に、ウィーン特有の優美な旋律が揺れ動く、スッペ《美しいガラティア》序曲など、華やかな音楽ばかり。
一方、序曲の間にはさまれるのが、ウィーン生まれ、新ウィーン楽派のアルノルト・シェーンベルクの難曲「ヴァイオリン協奏曲」(1934〜36)。アメリカ移住後に作曲され、彼が創始した十二音技法が用いられた。ハイフェッツが初演を断ったという晦渋な協奏曲だが、ヒラリー・ハーンの録音はじめ、なぜかこの曲、女性奏者による演奏が多い。今回もドイツを拠点に活躍する南紫音がソリスト。ロン=ティボー国際コンクールやハノーファー国際ヴァイオリン・コンクール上位入賞の若手実力派である。彼女の研ぎ澄まされた音色と超絶技巧、下野の緻密な組み立てが、作曲家独自の音楽の地平をどのように切り開くか楽しみだ。
文:柴辻純子
(ぶらあぼ2019年2月号より)
第322回 定期演奏会
2019.2/16(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
http://www.cityphil.jp/