ロザリンデの幅のある多面的なキャラクターが魅力です
名作オペラをエレクトーン伴奏によりハイライトで上演しているヨコスカ・ベイサイド・ポケットの「オペラ宅配便シリーズ」の「ぎゅぎゅっとオペラ Digitalyrica」、5作目となるのは、初のオペレッタ、J.シュトラウスⅡの《こうもり》だ。主人公ロザリンデを歌うのは、これまでのDigitalyrica4回にすべて出演しているソプラノの小川里美。小川にとって、ロザリンデという役には特別な思いがあるようだ。
「ロザリンデはこれまでに3回演じているのですが、実はまだ自分の中で“こういう人だ”というのが完成されていないんです。これは私としてはとても珍しいことです。ロザリンデという役はとても幅のある、多面的なキャラクターだと感じています。安定した日常の中で非日常を求めてしまう気持ち、大胆さやコケティッシュな部分と貞淑な部分を併せ持つ人。そういう幅の中を揺れていて、どちらにでもいけるというのが彼女の魅力だと思っています」
企画・演出を手掛ける彌勒忠史が今回どんなロザリンデを描き出すのか、小川自身とても楽しみにしているそうだ。
毎回エレクトーン伴奏を担当する清水のりこの存在も大きい、と小川は語る。
「エレクトーンは常に進化し続けている楽器ですが、清水さんの努力と探究心の結晶のような演奏にもぜひご注目ください。普通はオーケストラがやっていることをエレクトーン1台で表現するわけですが、オーケストラをただ真似るだけでなく、そこにエレクトーンの良さをどう出していくか、ということを日々考えて改善を重ねていらっしゃる。私たち歌い手も、そんな清水さんのモチベーションに合わせて常に進化しています」
“ぎゅぎゅっとオペラ”では他にも、一般から公募した合唱団が客席からオペラに参加する新しい試みを続けている。「みんなで作っている舞台なので、まったくストレスを感じることのないプロダクションです」と、小川は楽しそうだ。
「個人個人が本番に向けて音楽的な面を深めていくのは当然ですが、その上でみんなで工夫して一つのものを作り上げていく楽しみがあります。また、回を重ねてきて、エレクトーンも含めた演者の息がどんどん合ってきています。前回の《カルメン》と同様に今回も、舞台をぐるりと360度客席が囲む“アリーナ形式”になりますので、お客様にもより臨場感を味わっていただけるのではないかと思います」
「劇場には劇場にしかない空気があるので、ぜひ一度体験してみてください!」という小川里美からのメッセージ。オペラの醍醐味が「ぎゅぎゅっと」詰まった公演に足を運んでみてはいかが。
取材・文:室田尚子
(ぶらあぼ2019年2月号より)
オペラ宅配便シリーズ17 ぎゅぎゅっとオペラ Digitalyrica
J.シュトラウスⅡ《こうもり》(ハイライト版/日本語上演)
2019.2/24(日)16:00 ヨコスカ・ベイサイド・ポケット
問:横須賀芸術劇場電話予約センター046-823-9999
https://www.yokosuka-arts.or.jp/