【CD】ヴィブラ=エルーファ 上野信一 ヴィブラフォンリサイタル

 標準的なファンならば、オーケストラ曲において音色のアクセントやリズム的強調・装飾に用いられる――いわば補助的な役割を担う楽器としてヴィブラフォンを想像するだろうか。しかし当代きっての名手・上野信一によるヴィブラフォン(及び金属打楽器)のためのソロ作品集である本CDを聴くととてもそれだけの楽器ではない。ペダル・ダンパーや異なるモーター速度を持つ2台の楽器を使い分けたり、力感漲る打ち込みやさながら竹林をゆったりと吹き抜ける涼風を思わせるような浮遊感に富んだ音など、そのニュアンス的階層は誠に多彩。まずはシュトックハウゼンと西村朗作品から聴かれたい。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2019年1月号より)

【information】
CD『ヴィブラ=エルーファ 上野信一 ヴィブラフォンリサイタル』

シュトックハウゼン:ヴィブラ=エルーファ/ソレール:ナイチンゲールのように歌う/中川俊郎:エヴァンタイユ(扇)/新実徳英:風のかたち/平義久:モノドラム Ⅳ/西村朗:プンダリーカ(白蓮)

上野信一(ヴィブラフォン/打楽器)

コジマ録音
ALCD-7227 ¥2800+税