多彩な曲目を収めた小畠伊津子のアルバムは、音楽的に極めて雄弁でありながら、押し付けがましさのない卓越したピアノ表現に満ちた一枚。ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」では、非常に音の伸びのよい楽器を自在に操り、ファリャの「アンダルシア幻想曲」では陽性にして妖艶な音楽を展開。さりげなく挿し挟んだスヴェーリンクは、一服の清涼剤のような清々しいバロック。ショパンのスケルツォ第1番は強調する声部がときに新鮮で、心のざわめきを喚起する。プーランクの「エディト・ピアフを讃えて」は随所に現れる美しい間合いに、思わずため息が漏れる。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2019年1月号より)
【information】
CD『小畠伊津子 ピアノ・リサイタル』
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ/ファリャ:アンダルシア幻想曲/スヴェーリンク:変奏曲「我が青春は既に過ぎ去りぬ」/ショパン:スケルツォ第1番・第3番、バラード第3番、ノクターン第20番(遺作)/プーランク:エディト・ピアフを讃えて 他
小畠伊津子(ピアノ)
ナミ・レコード
WWCC-7884 ¥2500+税