ミクローシュ・ペレーニ ベートーヴェン・チェロソナタ全曲演奏会

巨匠チェリストが放つ渾身のベートーヴェン


 ミクローシュ・ペレーニのチェロは大地に足をしっかりとつけ、フレージングを隅々まで磨き抜き、豊かな低音から音が上がるにつれてぐんぐんと伸びていく。聴き手の居住まいをたださせる折り目正しい演奏から、曲のこうあるべきという理想が立ちあがる。今回フライヤーに一文を寄せている長谷川陽子をはじめ、同業チェリストからの評価もめっぽう高い名匠で、音楽に向かう全人的な姿勢も尊敬を集めているのだろう。
 さて、浜離宮朝日ホールでは2014年に息子のピアニスト、ベンジャミンとの競演で、15年にはバッハの無伴奏ソナタで、いずれも2日間にわたりその至芸にじっくりと向かい合う機会を作ってきた。今回はチェロ・ソナタ全5曲にモーツァルトとヘンデルの主題による3つの変奏曲、さらにホルン・ソナタの編曲版と、ベートーヴェン尽くしの2日間だ。
 共演はペレーニとほぼ同世代・同郷のブダペストに生まれたイムレ・ローマン。日本でも演奏者・教育者として足跡を残してきたべテランだ。ペレーニは1979年にはデジュー・ラーンキ、さらに2000年代前半にはアンドラーシュ・シフと、いずれもハンガリーを代表するピアニストとこれらの録音を残している。今年70歳を迎えたペレーニにとっては愛着もひとしおのプログラムだろうが、ベートーヴェンのチェロ・ソナタは生涯にわたって書き継がれ、それぞれの時代の創作様式を反映しているだけに、ほぼ20年の間隔で残されてきた過去の録音と比較すれば、作曲家と演奏家の省察の歩みをたどることもできよう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2018年11月号より)

第1日 2019.2/14(木)
第2日 2019.2/15(金) 
各日19:00 浜離宮朝日ホール
問:朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 
http://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/