高嶋ちさ子(ヴァイオリン)

さまざまな美しいメロディを存分に

 この9月に2年ぶりのCD『ロマンティック・メロディーズ』をリリースした高嶋ちさ子。前作『アダージェット』につづくクラシック集は、ヴァイオリンの美味しいメロディばかりを集めたような、ファン垂涎の一枚だ。
「コンサートでも、クラシックの名曲はお客さんの反応がいいのです。こちらの姿勢も少し違って、ポップスは、みなさんも曲に対するそれぞれの思いで聴くから、こちらがあまりごり押ししても仕方がない。だけどクラシックは、曲に対する自分の思いを乗せてわかりやすくお客さんに伝えなければなりません。ただ音符を並べて弾いてもダメで、自分のほうからメロディを引っ張り出しに行く感じでしょうか」
CDは、単なる名曲アルバムではなく、初めて知るような作曲家の名もあるし、よく知った名曲に「うーむ」と唸らせるような新しさを感じさせる編曲の作品も収められている。
「収録曲は、誰でも知っている曲、私が好きな曲、そしてインターネットで見つけて気に入った曲など、さまざまです。比較的珍しいところだと、配信サイトで見つけて、カナダの作曲家本人に直接問い合わせて楽譜を送ってもらったビル・ブリッジスの『ケルトの歌』や、私がマイアミのオーケストラにいた時にも弾いたポール・シェーンフィールドの『カフェミュージック』あたりでしょうか。聴いてくれたヴァイオリン・キッズたちの新しいレパートリーになればうれしいですね」
年末にかけて、やはり2年ぶりとなる、「12人のヴァイオリニスト」を率いての、全国30公演のツアーも始まっている。
「ツアーでは、前半をニュー・アルバムからの数曲で構成しています。自分の子供たちがまだ幼く、なるべく家を空けないようにしていますので当日移動も多くなり、ツアーは体力勝負です。でも最近は、12人のみんながすごく気をつかってくれて、彼女たちだけで結構音楽を作ってくれています。『あとは私が入るだけ』のような状態になっているので、気分的にはとても楽ですね。とはいっても、甘やかしてはいけませんので(笑)、ツアー中に担当パートを変えたり、ソリストを当日舞台の上でじゃんけんで決めたりというような新機軸も用意しています。緊張感を保ったステージをお楽しみに!」
ステージでの彼女のトークの鉄板クォリティは、説明不要。しかし決して聴き逃してはならないのが、メロディに対するナチュラルな執着心だ。ぜひ先入観なしに、CDを、コンサートを聴いてみてほしい。美しい歌を、必ず感じるはずだ。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2013年10月号から)

高嶋ちさ子 12人のヴァイオリニスト
★9月28日(土)・オリンパスホール八王子 ローチケ
10月26日(土)・大阪/ザ・シンフォニーホール ローチケ
27日(日)・かつしかシンフォニーヒルズ ローチケ
12月17日(火)・サントリーホール ローチケ
22日(日)・愛知県芸術劇場コンサートホール ローチケ

公演情報は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.j-two.co.jp/chisako

【CD】
『ロマンティック・メロディーズ』
日本コロムビア
COCQ-85022 ¥2940