バロック声楽曲の傑作を名匠の指揮で聴く悦び
関西合唱界の第一人者、本山秀毅が、桂冠指揮者を務めるびわ湖ホール声楽アンサンブルの2月の定期公演と東京公演を指揮する。本山はバッハ演奏の大家でもあり、主宰する京都バッハ合唱団は創立30周年を迎え、大阪チェンバーオーケストラを加えた「バッハアカデミー関西」の活動は20年近くになる。この団体は「年に4回演奏会があり、バッハのカンタータ全曲シリーズは全体の5分の4ほど済みました」という。本山のバッハ傾倒は、フランクフルト音大留学中の師匠ヘルムート・リリングの薫陶が大きいと語る。
「リリングはGesprӓchskonzert(解説付き演奏会)を盛んに行い、一種の啓蒙的アプローチとして、単にレクチャーだけでなく、台本の修辞学的な側面や音楽的に優れた点を部分演奏しながら、バッハをどう捉えるべきかを問題提起します。ありふれた解説ではなく、一段高い次元の概念を示し、バッハの響きの奥にあるものを演奏と共に提示していました」
本山は師匠に倣ってバッハ演奏会でレクチャーを行い、好評を得ている。今回びわ湖ホール声楽アンサンブルと取り上げるカンタータ第70番も解説付きで、演奏ともども楽しみである。
バッハ以外で好きな作曲家を問うと、即座に「モンテヴェルディ。彼は巨人です」と返ってきた。今回のプログラムの候補に「聖母マリアの夕べの祈り」も挙がっていたそうだ。これまでびわ湖ホール声楽アンサンブルとは歌劇《オルフェオ》と《ポッペアの戴冠》を取り上げたという。今後は、モンテヴェルディの「夕べの祈り」や歌劇《ウリッセの帰還》などを聴いてみたいものだ。今回の「バロック声楽作品の精華」での選曲は、モンテヴェルディに続く、イタリア・バロックのヴィヴァルディの「グローリア」がメインとなる。
「この曲はアマチュアもよく取り上げる平易な曲ですが、本格的な演奏で、ヴィヴァルディが指導していたヴェネツィアのピエタ養育院の響きの感じを出したいと思います。びわ湖ホール声楽アンサンブルはクオリティが高く、自発性に富んでいる。さすがと思わせる演奏にしたい」
ぜひとも彼らの力量をみせつけて欲しい。その前に歌われるヘンデル「主は言われた」は、作曲者弱冠22歳のローマ時代の作品で、「ヴィヴァルディに繋がる作品であり、イタリアの宗教曲らしく、耳から入ってくる響きの鮮烈さを出せれば」という。本山の首尾一貫したコンセプトのプログラムで、卓越したびわ湖ホール声楽アンサンブルと、彼が学長を務める大阪音楽大学が擁するザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団の演奏に、ますます期待は高まる。
取材・文:横原千史
(ぶらあぼ2019年1月号より)
びわ湖ホール声楽アンサンブル「バロック声楽作品の精華」
第68回定期公演 2019.2/9(土)14:00 びわ湖ホール(小)
東京公演 vol.10 2019.2/11(月・祝)14:00 東京文化会館(小)
問:びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136
https://www.biwako-hall.or.jp/