3つの音だけで奏でる“小さなシンフォニー”
人気オーボエ奏者・池田昭子の新譜は、オーボエとイングリッシュ・ホルンのための三重奏を集めた室内楽アルバム。新日本フィル首席奏者・金子亜未を第2オーボエに、N響の同僚である和久井仁をイングリッシュ・ホルンに迎えた強力布陣。池田と和久井に聞いた。
オーボエ2本とイングリッシュ・ホルンの三重奏は、オーボエ奏者たちにはおなじみの編成。古典派を中心に様々な作品があるが、このアルバムのメイン曲であるベートーヴェンの「三重奏曲 ハ長調」は、その代表曲だ。
池田「木管楽器のための室内楽作品で、これだけ大規模な曲はあまりありません」
和久井「もっと大きな編成に編曲しても面白いんじゃないかというぐらい。これはもう、小さなシンフォニーです。すごいなと思うのは、ベートーヴェンがそれを3つの音だけで表現しているということ。オーボエは重音も使えないので、本当に3つの音だけ。それなのにここまで充実した音楽を書けるというのがすごいですね」
それだけに、実力派の彼らにとってもかなりの難曲だ。
池田「以前吹いて、難しくて大変というイメージだったのですが、今回、『こうだよね』という理解が自然に沸き起こってきたのが、自分でもうれしかったですね。年齢を重ねて、オーケストラでもたくさんの指揮者とベートーヴェンを演奏した経験の蓄積が生きているのだと思います」
和久井「誘ってもらって、やや悩みました。大事なレパートリーなので、自分のやりたいことがきちっとできるかどうか。でもイングリッシュ・ホルンは負担も大きい楽器ですし、吹き切れる年齢のうちに録音できてよかったです」
カップリングは20世紀の作品。
池田「古典派の作品ばかり集めるよりは、異なるキャラクターのものを入れたほうが、興味を持って聴いていただけますから。難解な現代音楽ではなく、聴きやすいものを選んでいます」
次代を担う若手オーボエ奏者の筆頭格である金子は、受験生から学生の時代に、池田にも和久井にも師事していた時期があった。
池田「この編成だと2番オーボエが一番大変なんです。首席奏者の金子さんに2番をお願いするのはちょっと気が引けたのですが、二つ返事でOKしてくれました。そしてN響で一緒に演奏させていただいているのでツーカーな部分も多い和久井さん。やりたい放題の私にお二人がついてきてくださり、なにより音を出してわかり合えたのが本当にハッピーで、すごくいいアルバムができたと感じています」
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2018年12月号より)
CD
『オーボエとイングリッシュ・ホルンのために』
マイスター・ミュージック
MM-4045 ¥3000+税
2018.11/24(土)発売