捻りを効かせたスペイン・プログラムの妙味
今年4月より東京都交響楽団の首席客演指揮者を務めるアラン・ギルバートが、この12月、都響の定期演奏会に帰ってくる。今回組まれたのは、スペインをテーマにしたプログラム。リヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・キホーテ」、ビゼーの「カルメン」組曲抜粋、リムスキー=コルサコフのスペイン奇想曲の3曲が並ぶ。つまり、これはスペイン人作曲家のいないスペイン・プログラムなのだ。ドイツから見たスペイン、フランスから見たスペイン、ロシアから見たスペインといったように、外から見たエキゾチックなスペインの印象が音楽に刻印されているという次第。
セルバンテスの小説に着想を得たリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・キホーテ」では、まず色彩感豊かなオーケストレーションが聴きもの。都響のすぐれた機能性をギルバートが最大限に引き出してくれることだろう。この曲で主人公ドン・キホーテと従者サンチョ・パンサを務めるのは、チェロのターニャ・テツラフと、都響ソロ首席奏者であるヴィオラの鈴木学。名手共演も楽しみ。
ビゼーの「カルメン」組曲は、アラン・ギルバートによる抜粋で演奏される。スペイン情緒たっぷりの傑作だ。
リムスキー=コルサコフのスペイン奇想曲はスペインの民謡や舞曲が散りばめられた楽しい一曲。シュトラウスとの「オーケストレーションの達人」対決といった趣きもある。ヴァイオリン独奏をはじめソロの活躍も多く、華やかな音の饗宴を堪能できる。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2018年11月号より)
第869回 定期演奏会Cシリーズ
2018.12/18(火)14:00 東京芸術劇場コンサートホール
第870回 定期演奏会Aシリーズ
2018.12/19(水)19:00 東京文化会館
問:都響ガイド0570-056-057
http://www.tmso.or.jp/