安並貴史(ピアノ)

コンクールの覇者は作曲家ドホナーニを愛する26歳の青年


 ピアニストの野島稔を審査委員長に迎え、若く才能あるピアニストの発掘と育成、音楽文化の普及と振興を目的として、公益財団法人横須賀芸術文化財団が横須賀市との共催により行っている「野島稔・よこすかピアノコンクール」。これまで優れた新人演奏家を世に送り出しており、今年行われた第7回の優勝者には現在、東京音楽大学大学院の博士後期課程に在学中の安並貴史が選ばれた。
「このコンクールは今年で3回目の挑戦でした。博士課程に入ってもう一度自分のピアノを見つめ直したとき、それまでの挑戦の中で見つけた課題を克服したいという思いがあって…。今回はそれを乗り越えられたと思います」
 自分の中での課題とは何だったのだろう。
「明確に違ったのは準備期間です。単に練習時間が増えたというのではなく、練習の方法というものがかなり変わりました。社会に出て仕事をしながら、限られた時間の中でどういった練習ができるかということを大切にしながら、自分の演奏を磨くことができました」
 12月2日によこすか芸術劇場で開催される「優勝記念公演」には、コンクールで演奏した曲目も含まれている。
「修士課程の頃はバルトークやブラームスを中心に研究していました。本選でブラームスの作品を演奏し、今回の賞をいただくことができたので、これまでの積み重ねが評価され、とても嬉しく思っています」
 演奏曲の中には、安並が現在、博士課程で研究しているドホナーニの作品も。
「博士課程で何をやるかと考えてみたとき、修士課程の時に取り組んでいた2人の作曲家に共通する関連人物としてドホナーニが挙がってきました。素晴らしい弾き手であり、指揮者でもあった彼の作品を聴いて、たくさんの魅力、そしてピアニストのレパートリーとして素晴らしい要素がたくさん詰まっている作品だということに気がついたのです。ぜひたくさんの方にその魅力を伝えたいと思い、演奏と研究の両方から向き合っています。コンサートで弾く『4つの狂詩曲』のうち、第3曲をコンクールでも演奏したのですが、これも評価につながったことは、自分の中での大きな自信になりました」
 野島審査委員長は、安並の演奏について「自分の音楽、個性を正面から見据えた、意識が隅々まで行き届いた聴き応えのある演奏」と述べており、非常に高い評価を受けての優勝だったことがわかる。今後も演奏活動や指導にと幅広く活動を展開し、さらなる活躍が期待される安並の演奏を、響きの豊かな、よこすか芸術劇場でぜひ味わってほしい。
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2018年11月号より)

第7回 野島 稔・よこすかピアノコンクール優勝記念公演
安並貴史ピアノ・リサイタル
2018.12/2(日)14:00 よこすか芸術劇場
問:横須賀芸術劇場046-823-9999 
http://www.yokosuka-arts.or.jp/