上岡&新日本フィルの5枚目のCD。今回も「既成概念を排し、一から楽譜を読み直して音にする」という上岡のポリシーを如実に反映した、鮮度の高い演奏が展開されている。「死の島」は、各音が有機的に綾なす精緻かつ艶やかな好演。「悲愴」は、冒頭から(最後まで)1音1フレーズが再創出され、ベタな民族色や大仰さなど皆無の凄絶な表現が震撼をもたらす。第2楽章は鬱々とワルツを踊り、第3楽章は怒りと悲しみを懐に抱いて行進するかのよう。そして第4楽章で全てのベクトルが集約され、著しく明確なコントラバスの終焉が戦慄を与える。ぜひご一聴を!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2018年10月号より)
【information】
SACD『チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」 他 /上岡敏之&新日本フィル』
ラフマニノフ:交響詩「死の島」
チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」
上岡敏之(指揮)
新日本フィルハーモニー交響楽団
オクタヴィア・レコード
OVCL-00671 ¥3200+税