本CDで注目すべきはこのライヴ収録時が世界初演であったコントラバス協奏曲と交響曲第1番である。前者は調号を持たない西欧前衛的な作風と—四分音すら用いられている—日本的な情緒が融合した極めて個性的な楽曲でコントラバスには高度な技巧が求められる。対する交響曲第1番はフランクを思わせるような循環形式が用いられ、オーケストラの規模はマーラーばりの大編成、展開技法とオーケストレーションも卓抜した異形の怪/快作。「大澤壽人ルネッサンス」のきっかけとなったピアノ協奏曲第3番も収録され、山田和樹らによる献身的で極上な演奏も相まって大澤ファンならずとも大必聴。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2018年8月号より)
【information】
CD『大澤壽人の芸術/山田和樹&日本フィル』
大澤壽人:コントラバス協奏曲、ピアノ協奏曲第3番、交響曲第1番
山田和樹(指揮)
日本フィルハーモニー交響楽団
佐野央子(コントラバス)
福間洸太朗(ピアノ)
収録:2017年9月、サントリーホール(ライヴ)
日本コロムビア
COCQ-85424/5(2枚組) ¥3600+税