【出演者変更】NHK音楽祭 2018

“新時代を切りひらくシェフたち”が率いる4つの名門楽団が集結!

*出演者変更のお知らせ
「NHK音楽祭 2018」のNDRエルプフィルハーモニー管弦楽団公演にソリストとして出演予定であったピアニストエレーヌ・グリモーは、肩の故障のため、来日が不可能となりました。代役としてアンナ・ヴィニツカヤが出演いたします。曲目の変更はございません。(ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調)
詳細は下記ホームページをご確認ください。
http://www.nhk-p.co.jp/


芸術の秋、東京には世界から最高ランクのオーケストラがやってきて日替わりで演奏会を開くが、あまりに多すぎて何をチョイスしたらいいか分からないというお悩みも耳にする。そんな時、「これを押さえれば世界の動向が分かる」とお勧めなのがNHK音楽祭だ。今年は「新時代を切りひらくシェフたち」というテーマのもと、4つの名門楽団が並んだ。

ラトル&ロンドン響は“攻め”のプログラム

トップを飾るのはロンドン交響楽団(9/27)。100年を超える歴史をひも解けばエルガーやビーチャム、戦後もプレヴィンやコリン・デイヴィスが総裁や首席に名を連ねるロンドン最古の楽団だ。今回の来日では、2017/18シーズンをもってベルリン・フィルを退任、昨秋よりロンドン響の音楽監督を務めているサイモン・ラトルとの共演がはやくも聴けるということで話題性満点。16年に及ぶベルリンでの在任でラトルは得意とする近現代や古典派のみならず、ドイツ・ロマン派の斬新な解釈で21世紀のクラシックを牽引してきた。常に話題の中心にいたので、ずいぶんとキャリアを積んだ気もするが、実はまだ60代前半。年齢的には円熟期に入ったくらいだから、これからは母国イギリスのトップオケと新時代を作っていくことだろう。
今回はイギリス色にこだわらず、ラトルの得意とする近現代で固めた攻めのプログラミングだ。ラヴェル「マ・メール・ロワ」ではじまり、バーミンガム市響時代からラトルがライフワークとして取り組むシマノフスキの「ヴァイオリン協奏曲第1番」につなぐ。ソロのジャニーヌ・ヤンセンはノーブルかつオーセンティックなアプローチで安定した評価を得ている美人ヴァイオリニスト。後半は村上春樹の小説『1Q84』でも話題になったヤナーチェク「シンフォニエッタ」。ファンファーレではブラスセクションが壮麗な音のシャワーで客席を祝祭感に包み、次々に繰り出される不思議な節回しで魅了する。

N響で聴く「カルミナ・ブラーナ」

続く10月1日は我らのNHK交響楽団が首席指揮者パーヴォ・ヤルヴィとオルフの「カルミナ・ブラーナ」をメインとするプログラムを取り上げる。N響の「カルミナ」といえば4年前のファビオ・ルイージとの名演が記憶に新しいが、熱演型のルイージとは異なり、パーヴォは作品の輪郭をシャープに描き出してくれるのではなかろうか。ベルカントの女王として世界を席巻するソプラノのオルガ・ペレチャッコ、カウンターテナーの第一人者マックス・エマヌエル・ツェンチッチら、歌唱陣も豪華だ。

NDRエルプフィルにはグリモーが登場

11月8日はNDRエルプフィルハーモニー管弦楽団。かつてヴァントら名匠が振った北ドイツ放送響が、昨年ハンブルクの本拠地ホールの落成に併せて改名した。新時代を迎えた同団を来期より率いるのがアラン・ギルバートだ。日系の血を引くニューヨーカーで、ニューヨーク・フィルの音楽監督を務めた後、都響の首席客演に就任するなど私たちとも縁が深い。ハンブルク生まれのブラームス(交響曲第4番)をメインに、エレーヌ・グリモーを独奏に迎え、ラヴェル「ピアノ協奏曲」ほかを披露。

LAフィルはジョン・ウィリアムズ特集

今回はさらに年をまたいで3月21日に、今をときめくグスターボ・ドゥダメルと創立100周年を迎えるロサンゼルス・フィルハーモニックが登場する。曲目にも注目だ。ロスといえばハリウッド。今回彼らが演奏するのは映画音楽界の巨匠ジョン・ウィリアムズがスクリーンを彩ってきた名曲の数々だ。『スター・ウォーズ』『ジュラシック・パーク』『シンドラーのリスト』(ヴァイオリン独奏:三浦文彰)——胸を踊らせ、心を熱くしたあの名旋律を、現地の一流オケで堪能する贅沢。

一つひとつの公演のクオリティだけではなく、通して聴けばまさに「新時代を切りひらく」というテーマ通りに、話題のコンビ、斬新なプログラミングで次の10年が透けて見えてくるラインナップなのだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2018年8月号より)

2018.9/27(木)19:00 ロンドン交響楽団
2018.10/1(月)19:00 NHK交響楽団
2018.11/8(木)19:00 NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団
2019.3/21(木・祝)17:00 ロサンゼルス・フィルハーモニック
NHKホール
問:NHKプロモーション音楽祭係03-3468-7736
http://www.nhk-p.co.jp/