モーツァルトのスペシャリストが生み出す滋味深い響き
オーストリア出身の名匠、ハンス・グラーフが東京都交響楽団と初共演する。グラーフは、ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団、ヒューストン交響楽団などの音楽監督を歴任し、ウィーン国立歌劇場やウィーン・フィルにも客演。ザルツブルク・モーツァルテウム管とモーツァルトの交響曲全集の録音を残すなど、とりわけモーツァルトを得意としている。
もちろん、都響との「プロムナードコンサート」でもモーツァルトを取り上げる。交響曲第34番はモーツァルトのシンフォニーの中では演奏機会が少ない作品だが、ザルツブルク時代の最後の交響曲を敢えて取り上げるところにモーツァルトのスペシャリストとしての意気が感じられる。都響の緻密なアンサンブルが作品の魅力を際立たせるだろう。メインはドヴォルザークの交響曲第8番。ボヘミア情緒あふれるこの名曲で、今年69歳、まさに円熟というべきマエストロがどんな演奏を披露してくれるのか、楽しみである。
また、プログラムの真ん中では、モスクワ生まれのカティア・スカナヴィを独奏者に迎え、サン=サーンスのピアノ協奏曲第2番が演奏される。モスクワ音楽院やパリ音楽院で学んだ彼女は、1989年のロン=ティボー国際音楽コンクールで第3位に入賞。都響とは、2009年10月の定期演奏会で共演し、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番を弾いている。サン=サーンスの古典への眼差しが感じられるこの作品で生き生きとした演奏を聴かせてくれることだろう。
文:山田治生
(ぶらあぼ2018年7月号より)
プロムナードコンサート No.379
2018.8/25(土)14:00 サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057
http://www.tmso.or.jp/