本来、2つの上声による旋律と、通奏低音のために書かれる「トリオ・ソナタ」。バッハは40代の時、この役割をそれぞれ右手と左手、足鍵盤(ペダル)に当てはめ、オルガンのための全6曲に仕立てた。これらはアンサンブル編曲での演奏機会も多いが、当盤はリコーダーとオブリガート・チェンバロによる録音。だが、機械的に3声を1+2声に分けて移調するのではなく、2つの楽器が有機的に機能するよう、音楽全体を熟慮した再構築が成されている。闊達な表現と変幻自在な音色を併せ持つ根岸基夫のリコーダーと、理知的で洗練された鈴木理賀のチェンバロ。6つの佳品へ新たな地平を拓く。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2018年8月号より)
【information】
CD『リコーダーとチェンバロによる J.S.バッハ 6つのソナタ
/根岸基夫&鈴木理賀』
J.S.バッハ(根岸基夫編):ソナタ第1番〜第6番 BWV525-530
根岸基夫(リコーダー)
鈴木理賀(チェンバロ)
コジマ録音
ALCD-1174 ¥2800+税