マルク・ミンコフスキOEK芸術監督就任記念 オーケストラ・アンサンブル金沢 《ペレアスとメリザンド》(セミ・ステージ形式)

ドビュッシーイヤーを盛り上げる話題のオペラ公演

マルク・ミンコフスキ
C)GEORGES GOBET AFP

 《ペレアスとメリザンド》は、オペラには珍しく、「分かり合えない辛さ」を描いた傑作である。劇中では、王子ゴローが妻メリザンドと心を通わせた異父弟ペレアスを刺殺するが、血にまみれたその瞬間すらも、ドビュッシーの寂寥感漂う響きで包まれてしまい、メリザンドの死の幕切れでは、10小節の後奏がすべてを浄化して、哀しみを通り越した明るさのごとく、長調のハーモニーが全曲を閉じるのだ。
 この夏、金沢と東京で、オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の《ペレアスとメリザンド》を振るマルク・ミンコフスキは、バロック・オペラをライフワークとしつつも、ワーグナーからドビュッシーまでのレパートリーを持つ“挑戦者”のマエストロ。彼の考え抜かれた棒捌きは、楽譜を読み込んでの絶妙なテンポ配分に明らかであり、「ミンコフスキ以外で聴きたくないオペラ」がファン層の話題になることも多い。その意味でも、OEK芸術監督就任記念となる今回の公演は注目すべきステージだろう。作曲者の原意通りにテノール(スタニスラス・ドゥ・バルベラック)を主役に起用し、セミ・ステージ形式で歌手の演技を見せながら管弦楽も舞台後方に置くので、奏者たちの表情付けも、ミンコフスキの采配ぶりとともにヴィヴィッドに伝わってくるのである。キアラ・スケラートのメリザンドへの期待も高まる。
 《ペレアス〜》には昔から名演が多い。というのも、演奏者の「プロ魂を刺激する」音楽であるからだ。みな、繊細でありながら弱々しくはない。バレエダンサーの如く、鍛え上げられた肉体と精神を通じて、究極の哀感と美を呈するのみである。音楽で人生に覚醒したい人にお勧めしたい。
文:岸 純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ2018年7月号より)

第405回定期公演フィルハーモニー・シリーズ
2018.7/30(月)18:30 石川県立音楽堂 コンサートホール
東京特別公演 
2018.8/1(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:石川県立音楽堂チケットボックス076-232-8632
  東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999(8/1のみ)
http://www.oek.jp/

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