現代人に問いかける前代未聞の『ロミオとジュリエット』
日本で唯一のレジデンシャル・ダンス・カンパニーとして設立15年目を迎えるNoism。芸術監督の金森穣はプロフェッショナルな舞踊家・舞踊団の理念を掲げ、貫き、様々な作品を世に送り出してきた。
中でも「劇的舞踊シリーズ」は、ダンスにおける物語のありかたを根本から問い直してきた連作である。今回はいよいよ『ロミオとジュリエット』に挑む。音楽はバレエでも有名なプロコフィエフだが、なぜかタイトルのジュリエットは複数形なのである。しかも舞台は病院だという。これはいったいどういうことになるのか…。
創作にあたり、金森はいくつかのメモを公開している。恋は悦びと苦しみが同居する矛盾した感情であること。SNS等の普及と精神的な変化・変質で、今の我々は昔なら精神疾病と言われるような精神状態なのではないか。そこでは科学や医療や信仰の意味は読み替えられていき、もはや社会全体が病院の中で暮らしているようなものなのかもしれない。そんな現代において「死に値するほどの何か」を見いだせるのか…等々。古典的名作を扱いながらも、もちろん金森の問いかけは、現代を生きる我々の胸に響くものになるはずだ。
今回は金森自身も11人のダンサーの一人として特別出演する。さらにはSPAC―静岡県舞台芸術センターとガッツリ組んでクリエイションをし、 SPAC所属の俳優8人が出演する。役者の出演はこれまでもあったが、この人数は初めてではないか。衣裳はパリで注目を集める中里唯馬。美術はこれまでもNoismと協働を重ねてきた家具作家の須長檀と建築家の田根剛。金森のさらなる進化に期待が高まる舞台である。
文:乗越たかお
(ぶらあぼ2018年7月号より)
2018.7/6(金)〜7/8(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈劇場〉
2018.7/14(土) 富山/オーバード・ホール
2018.7/21(土)、7/22(日) 静岡芸術劇場
2018.9/14(金)〜9/16(日) 彩の国さいたま芸術劇場〈大ホール〉
問:りゅーとぴあチケット専用ダイヤル025-224-5521(新潟・埼玉)
アスネットカウンター076-445-5511(富山)
SPACチケットセンター054-202-3399(静岡)
http://noism.jp/