精力的にアルバムを発表し続ける山根弥生子。ショパン作品集の第3弾は夜想曲集であり、最後に幻想曲op.49も収めた。ショパンの21曲の夜想曲のうち11曲を選んでいるが、山根は初期のものから晩年の傑作までをバランスよく選曲。第1、2番はパッセージの一音一音にも意味を感じさせられる、甘美なカンタービレ。第4番は中間部の激しい曲想のコントラストが鮮やかだ。第7番以降の作品は深みを増すが、第13番の低音が織りなす音楽的時間は哲学的な迫力を帯びる。幻想曲に聴かれる深い呼吸、自由と抑制の考え抜かれた均衡は、まさにベテランの至芸である。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2018年5月号より)
【information】
CD『山根弥生子(ピアノ) ショパンを弾く Vol.3』
ショパン:夜想曲第1番・第2番・第4番・第5番・第7番〜第9番・第13番・第14番・第17番・第20番(遺作)、幻想曲
山根弥生子(ピアノ)
コジマ録音
ALCD-9181 ¥2800+税