全篇にわたって、歌と言葉に対する愛情が迸る。国立音大からイタリアに学び、藤原歌劇団をはじめオペラの檜舞台で秀演を重ねている名ソプラノ、高橋薫子。そんな彼女が「好きな曲」だけを選りすぐった。「海」「春」といった日本語の言葉ひとつにも宿る命。かたや、ベル・カントで歌いこなされるイタリア語の名アリア、流麗に表現されたフランス語の歌曲にも、とりどりに感情が躍動する。まさに、日本が誇るディーヴァの面目躍如。そして、曲想によって自在に色彩を変化させ、高橋の歌う言葉にヴィヴィッドに応えて、饒舌に“語る”ピアノの河原忠之の名アシストぶりも特筆ものだ。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2018年5月号より)
【information】
CD『わたしの好きな歌/高橋薫子』
中田喜直:未知の扉、おやすみなさい、悲しくなったときは
木下牧子:ユレル、竹とんぼに、おんがく
フォーレ:月のひかり、夢のあとに
グノー:私は夢に生きたい
草川信:揺籃のうた
アーン:もし僕の詩に翼があったなら
プッチーニ:ムゼッタのワルツ(私が街を歩けば) 他
高橋薫子(ソプラノ)
河原忠之(ピアノ)
日本アコースティックレコーズ
NARD-5063 ¥3000+税