藤田六郎兵衛(能楽笛方)

C)友澤綾乃

 2002年にスタートした茂山千之丞演出の「狂言風オペラ」。オペラといっても歌手は登場せず、アリアは歌われない。出演は大蔵流狂言の茂山一門。演奏は管楽合奏、いわゆるハルモニームジークが担当し、これまでにモーツァルトの四大オペラを国内外で上演してきた。
 茂山千之丞亡き後も企画は引き継がれ、今年、芸術監督に観世流シテ方で人間国宝の大槻文蔵を迎え、能楽笛方藤田流宗家の藤田六郎兵衛が演出を担当する、新しい狂言風オペラ《フィガロの結婚》が誕生する。今回の上演は、史上初の能と狂言、文楽のコラボレーションという画期的な試み。殿様(伯爵)は文楽人形が演じ、三代桐竹勘十郎が操る。そして声は六代豊竹呂太夫。奥方(伯爵夫人)は観世流シテ方の赤松禎友が演じ、その他は狂言方が勤める。音楽はスイスから初来日するクラングアート アンサンブル(管楽八重奏)が担当する。脚本・演出を手がけた藤田六郎兵衛に聞いた。
「殿様がお花(スザンナ)に迫るところなど、人形だと結構ベタベタしてもいやらしくならない。また、太夫の語りは殿様のセリフだけでなく情景描写もするので、とても面白い世界になると思います。能、狂言、義太夫という三芸能の日本語を伝えるために数百年前から伝わってきた発声、言葉の扱いが、舞台で入り乱れます。さらに、三味線の鶴澤友之助さんが演奏に参加します。彼はコントラバスで音大を目指していたのに縁あって文楽三味線の世界に入った人です。西洋音楽を知っている彼には、有名なアリアも太棹で弾いてもらうつもりです」
 6歳の時にすでにプロの笛方として舞台に立っていた藤田だが、一方で高校・大学と声楽を専攻し、卒業後母校で5年間オペラ研究授業の助手を務めていた。その間に体験したオペラやミュージカルの舞台経験が今回の舞台に役に立ったという。
「私は四百年以上続く笛の家に生まれ、4歳から笛の稽古を受け、5歳から舞台活動してきました。高校から受けた声楽という西洋音楽の専門教育は新たな知識の吸収でした。この時間差があったので東の音、西の音の整理が自身の中でできたのでしょう」
 東京公演の会場は話題のGINZA SIX内に移築されてきた観世能楽堂。
「まず建物の中に入って、正面に屋根が載った舞台に圧倒されるでしょう。能舞台が屋外に建っていた名残りです。すべてが木造で、正面に松の書かれた鏡板、向かって左に出入りの幕が付いた廊下様な橋掛かり。その舞台を囲むように配列された客席。これが日本独自の劇場です。今回、貴族という権力者と平民との対立を、人間愛をもって平等とするという、《フィガロの結婚》の大きなテーマを、そのまま舞台で表現する、そんな脚本が書けたと思っています」
取材・文:大村 務
(ぶらあぼ2018年3月号より)

狂言風オペラ 《フィガロの結婚》
2018.3/19(月)14:00 18:00、3/20(火)15:00 19:00 観世能楽堂(GINZA SIX内)
問:ミュージック・マスターズ03-3560-6765
2018.3/22(木)18:30 京都府立けいはんなホール 
2018.3/23(金)18:30 大阪/いずみホール
問:ヴォイシング06-6451-6263

  • La Valseの最新記事もチェック

    • 【レポート】武蔵野音楽大学 管弦楽団合唱団演奏会「荘厳ミサ曲」リハーサル取材
      on 2019/11/15 at 01:00

      若い学生たちが巨匠のタクトで ベートーヴェン「荘厳ミサ曲」に挑む    今年創立90周年を迎えた武蔵野音楽学園。初期には武蔵野音楽学校として認可され、戦後には音楽大学音楽学部としていち早く設置認可されるなど、昭和初期から激動の時代を乗り越え、永く日本の音楽界の重要な礎となってきた学び舎であり、ここから巣立った名音楽家も数多い。    90周年を記念する演奏会として開催されるのが、12月の「武蔵野音 [&#8230 […]