熊谷和徳 全文インタビュー

C)宮川舞子

 

1)日本で相応のキャリアを積みながら、なぜもう一度NYに戻ってタップを研鑽
しようとされたのでしょうか?

今 まで何度か自分の中でもういちど『ゼロからスタート』したいというタイミ
ングが何度かありました。一度目は19歳でNYに行くと決めたと き、二度目は
26 歳でアメリカでのテロを経験した後日本に帰国したとき、そして今回は東
日本大震災後に自分自身のモチベーションや生き方のようなことを改 めて考え
なおした ことがきっかけとなりました。自分自身のなかでキャリアとは、あま
り大きな意味はなく、常に大切に思うのはいつでもどれだけ情熱をもって 生き
ていけるかと いうことです。そういう意味でまたニューヨークのタップシーン
のなかで、初心に戻ってがむしゃらになってタップを踏みたいとおもいました。

 

2)その中で一番得たものはなんでしょうか?

自分自身をニューヨークという街におくことは、様々な面においてチャレンジン
グなことです。
タッ プを踊るということについてももちろんですが、一日一日の生活のなかで
様々な人種の人達とコミュニケーションをとりながら生きていくこと は本当に
大変なこ とも多いです。日本にいたら当たり前と思えることが、こちらでは通
用しないこと、その一つ一つを乗り越えていく作業は大きな『気づき』を 与え
てくれます。 今たくさんのことを学んでいるという気がしています。

 

3)今後のやりたいこと、やるべきと思っていることはありますでしょうか?

僕 がアーティスト活動を通してやりたいことのひとつには、自分自身を育てて
くれた社会やタップシーンに対して恩返しをしていきたいというこ とがありま
す。特 に自分が育った東北という場所にタップを通してたくさんのポジティブ
なエネルギーを送っていきたいと思っていますし、タップというアート のシー
ンにおいて も後進の育成などを通して今後の発展のために頑張っていきたいと
おもっています。

 

4)これまでのキャリアでタップというダンスへの見方、考え方はどんな風に変
わったのでしょうか?

タッ プダンスへの想いや気持ちは、子供の頃タップをはじめて見たときや15
歳で初めてタップを踏んだときとあまり変わっていません。本当に タップを踏
んでいる ときが楽しいですし、そういう気持ちで踊り続けていきたいと思って
います。ただ、社会的に見られる『タップダンサー』の位置付けやタップ とい
うアートに対 する評価に対しては気になるところがたくさんあります。まだま
だ、一般的にこのアートの本当の素晴らしさや、歴史的な素晴らしいタップダ
ンサーについては 知られていないことが山ほどあると感じています。そのこと
をいつでも伝えていかなければいけないと思っています。

 

5)凱旋公演では何を見せたいと思っていますか?

『DANCE TO THE ONE』というタイトルには、『本当に大切なこと』のために踊る
という意味があります。
生きていくことのなかで、自分が思う大切なことのためにニューヨークの仲間達
と共に精一杯踊りたいです。
タップは見るだけでなく、音を聴き、感じるものだとおもっていますが、お客さ
んが感じることのなかに『光』を見いだしてもらえたら幸いで す。みんなが
もってる魂のなかにあるGROOVEとたくさん共感、共鳴したいと願ってます!

 
★熊谷和徳 凱旋公演 2014
DANCE TO THE ONE 〜A Tap Dancer’s Journey〜
2014年1/17(金)〜19(日)・Bunkamuraオーチャードホール
出演/熊谷和徳 ミシェル・ドーランス(タップ)ビル・ウェア(ビブラフォン)アレックス・ブレイク(ベース)ケニー・ウォルセン(ドラム)マサ・シミズ(ギター)
¥8500〜¥3000
チケットスペース03-3234-9999
http://www.tbs.co.jp/event/dance_to_the_one/#info1