コンスタンチン・リフシッツ(ピアノ)

バッハの“舞曲”で聴く崇高な境地

C)Sona Andreasyan
 次世代の巨匠と目されるコンスタンチン・リフシッツが、今春J.S.バッハに関わる壮大なプロジェクト『BACHは踊る』に挑む。まずはJ.S.バッハの333回目の誕生日である3月21日、紀尾井ホールで「イギリス組曲」全曲、同24日にフィリアホールで「フランス組曲」全曲、そして同25日には所沢市民文化センターミューズで「パルティータ」全曲。
「『イギリス組曲』、『フランス組曲』、そして『パルティータ』が作曲されたのは、ケーテンの宮廷楽長時代からライプツィヒの音楽監督になった頃の時代で、いずれもアルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグの4つの舞曲を軸とするフランス舞曲形式で書かれています。それのみに留まらず、J.S.バッハはそれぞれにプレリュードやメヌエット、ガヴォット、ブーレなどの舞曲を付け加えて完成させています。もちろんその頃には、踊るための舞曲から演奏のための舞曲に変化したものもありますが、それでも“ダンス! ダンス! ダンス!”なのです」
 リフシッツは、世に出るための登竜門であるコンクールを経験することなく、デビューを果たした。ロシアン・ピアニズムの主流に身を置く名教師タチアナ・ゼリクマンに薫陶を受けたリフシッツは、わずか13歳でCD『ファースト・レコーディング』で神童として注目を集め、17歳の時のCD『J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲』では世界的なセンセーションを巻き起こした。1991年の初来日以降、ベートーヴェン、シューベルト、ショパン、ムソルグスキーなど比類のない演奏で聴衆の圧倒的な支持を得ているが、とりわけJ.S.バッハには格別な対峙を示し、録音にしても「平均律クラヴィーア曲集」、「音楽の捧げもの」、「フーガの技法」、再録音の「ゴルトベルク変奏曲」など、著しく崇高な境地を築き上げている。
「J.S.バッハと日本の舞踊をコラボレートすることが私の大きな夢です。能や謡、歌舞伎ですが、私の演奏するJ.S.バッハを聴いて、そういう“舞”をイメージしてもらえたらと思っています。日本と西洋の神話には同じようなエピソードもたくさんありますし、もちろん舞踊と同じ舞台で演奏することが理想ですが、それはまたいずれ…(笑)」
 今回の来日では、東京・春・音楽祭にも参加、3月30日と4月1日の両日、東京文化会館でJ.S.バッハのピアノ協奏曲全7曲他を弾き振りする(管弦楽:トウキョウ・ミタカ・フィルハーモニア)。まさに霞たなびく頃、私たちは桜とリフシッツとJ.S.バッハに酔う。
取材・文:真嶋雄大(音楽評論)
(ぶらあぼ2018年2月号より)

BACHは踊る
イギリス組曲 2018.3/21(水・祝)13:00 紀尾井ホール(ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040)
フランス組曲 2018.3/24(土)14:00 フィリアホール(045-982-9999)
パルティータ 2018.3/25(日)15:00 所沢市民文化センターミューズ アークホール(04-2998-7777)
http://www.japanarts.co.jp/

東京・春・音楽祭 ―東京のオペラの森2018―
J.S.バッハ:ピアノ協奏曲全曲演奏会
Ⅰ. 2018.3/30(金)19:00
Ⅱ. 2018.4/1(日)15:00
東京文化会館(小)
問:東京・春・音楽祭チケットサービス03-6379-5899 
http://www.tokyo-harusai.com/

他公演
2018.3/17(土)、2018.3/18(日)大阪/いずみホール(06-6944-1188)