池田昭子(オーボエ)

“すべてを出し切った”渾身の無伴奏アルバム

Photo:Yasuhisa Yoneda
 人気のオーボエ奏者・池田昭子3年ぶり7枚目のソロ・アルバムは『パルティータ〜無伴奏オーボエ作品集〜』。J.S.バッハ「パルティータ BWV1013」、テレマン「12のファンタジー」より6曲、C.P.E.バッハ「無伴奏ソナタ Wq.132」と、無伴奏のバロック作品を中心に集めた。どれも原曲はフルート曲だが、オーボエのレパートリーとして広く確立されている作品ばかり。池田にとってバロック系のアルバムはこれで3枚目となる。
「バロックの専門家のみなさんの演奏は、もちろん素敵だと思います。私のようなモダン楽器の奏者は、古楽の方たちのようには歴史や奏法を学んでいないので、もしかしたらその時のインスピレーションで演奏してしまっている側面もあるとは思うのです。でも、そこを物真似しても中途半端なものになりますし、私は私なりに、モダン・オーボエで、自分が信じるように演奏しています」
 ピアノで弾くバッハ、特にマレイ・ペライアのバッハが好きだと言う。「少しその影響があるかもしれません」と語る。
 レコーディングの山場だったと振り返るのが「パルティータ」の1曲目〈アルマンド〉。
「練習して曲を知れば知るほど、音楽のさまざまなキャラクターが見えてきて、どんなテンポで吹けばいいのかわからなくなってしまったのです。表現したいことを出せるテンポを、自分なりに咀嚼して身となるまでに、とても時間がかかりました。今年の1月にリサイタルで演奏した時は、すごく速く吹いてみたのですが、あとで録音を聴いてみると、それではやっぱり表現しきれていない。そう思って、今回のレコーディングでは結構遅めのテンポで吹きました。いろんな方がこの曲を吹いていらっしゃる中でも、かなり遅めのバージョンだと思います」
 たしかに、一歩一歩踏みしめながら進むようなアプローチは独特だ。アルマンド=舞曲という外面でなく、音楽のもっと底のほうに潜む何物かを掬いとるかのよう。そんな表現は、この録音に臨んだ彼女の姿勢とも通ずるのかもしれない。
「いつもはもっと穏やかに、何回でも同じように演奏できるように吹くことを心がけていたのですが、今までのCDを聴いてみて、もう少し“攻めて”もいいかなと思ったのです。ダイナミック・レンジを広くとってみたり、とりあえず自分が『こうしたい』と思ったことは全部やらせてもらいました」
 結果、「今やれることはすべて出し切れた」という納得の一枚が完成した。これまでの彼女とは別の顔が見えてくるかもしれない。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2017年11月号より)

CD
『パルティータ〜無伴奏オーボエ作品集〜/池田昭子』
マイスター・ミュージック
MM-4020 ¥3000+税
2017.10/25(水)発売