2014年にはじまったトランス=シベリア芸術祭は、ヴァイオリニスト、ワディム・レーピンが「芸術をもうひとつの“旅”と考え、東西の架け橋としたい」と想いをこめ、“シベリア横断”の名を冠したもの。架け橋の東端となる日本で行われた昨年の公演では、レーピンと、そのパートナーで、バレエ界を代表するダンサー、スヴェトラーナ・ザハーロワの共演が大きな話題を振りまいた。
本年はさらにパワーアップした形での上演となる。プログラムは『アモーレ』と『パ・ド・ドゥ』の2つ。日本初演となる『アモーレ』は、3人の現代振付家が“愛”をテーマに振り付けた新作を上演。特に注目したいのは、ボリショイ・バレエ出身のユーリー・ポソホフ振付〈フランチェスカ・ダ・リミニ〉。ポソホフは、レールモントフ原作『現代の英雄』をボリショイ・バレエで初演、ロシア物語バレエの新たな可能性を拡げ、次作『ヌレエフ』も上演前から話題を呼んでいる。禁じられた愛に身を投じ、下界に堕とされていく恋人たちの悲劇を、チャイコフスキーの幻想曲とともに描き出す。前回も参加したボリショイ・バレエのミハイル・ロブーヒンに加え、若きプリンシパル、デニス・ロヂキンが出演するのも楽しみだ。
昨年も上演された『パ・ド・ドゥ』では、白鳥の死にレーピンが奏するヴァイオリンの音がそっと寄り添う〈瀕死の白鳥〉、ザハーロワをめぐる男性ダンサー2人の駆け引きに、舞台上で演奏するレーピンも参戦する〈レ・リュタン〉(振付:ヨハン・コボー)などを上演。目と耳で2人の強いパートナーシップを楽しむこともできる。
進化を続けるザハーロワの世界に期待したい。
文:守山実花
(ぶらあぼ2017年9月号より)
スヴェトラーナ・ザハーロワ『アモーレ』日本初演
2017.9/26(火)、9/27(水)各日19:00 Bunkamuraオーチャードホール
『パ・ド・ドゥ for Toes and Fingers』
2017.9/29(金)19:00 Bunkamuraオーチャードホール
10/1(日)18:00 昌賢学園まえばしホール(前橋市民文化会館)
問:Bunkamuraチケットセンター03-3477-9999(10/1以外)
http://www.bunkamura.co.jp/
昌賢学園まえばしホール027-221-4321(10/1のみ)
http://www.maebashi-cc.or.jp/maebashishibun/