伝統の尊重と演奏の可能性を追求
ミヒャエル・ザンデルリンクが2011年以来首席指揮者を務めるドレスデン・フィルとともに来日する。ミヒャエル・ザンデルリンクといえば旧東独の名匠クルト・ザンデルリンクを父親に持ち、二人の兄トーマスとシュテファンも指揮者というサラブレッド。ドレスデン・フィルは1870年代創立の老舗で、ミヒャエルの言葉を借りれば、「暗くて豊かなドレスデン・サウンド」を持ったオーケストラである。
ドイツの新世代の旗手と歴史あるオーケストラのコンビが、どんなサウンドを生み出すのかに注目したい。ミヒャエルは決して伝統にあぐらをかくタイプの指揮者ではない。以前「伝統とは諸刃の剣」と語っていたように、伝統を尊重したうえで常に作品の演奏の可能性を追求し、慣れ親しんだ名曲に対しても意欲的に取り組む。
今回のプログラムはそんな同コンビの魅力を十分に伝えるものといえる。7月2日の川崎公演は、小川典子の独奏によるベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」とブラームスの交響曲第1番をメインに据えた王道のドイツ音楽プロ。7月4日の東京公演ではベートーヴェンの交響曲第5番「運命」と、ショスタコーヴィチの交響曲第5番という、ふたつの「第五」が並べられるのが興味深い。両曲の関係性という点でも示唆的であり、また聴きごたえ十分の交響曲を2曲も聴けるという「お得感」もうれしい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ 2017年6月号より)
7/2(日)15:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
7/4(火)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
※全国公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.japanarts.co.jp/