初心者から“通”まで虜にする新・名曲集
2015年4月の常任指揮者就任から2年間、その共演は毎回充実して意義深く、聴く人に感銘を与え続けている――そんな好調なコンビが高関健と東京シティ・フィルである。この春からは共働作業も3年目を迎え、ますますの成果が期待される。
6月のティアラこうとう定期は、チャイコフスキーの「弦楽セレナーデ」とヴェルディのオペラ序曲・前奏曲集という、ちょっと意外なカップリングの名曲プロ。凝ったプログラムで知られる知的な高関のこと、ここも何か意図があるのかもしれない。チャイコフスキーは同作の作曲時期の1880年頃にはイタリア滞在も長かったし、ヴェルディ作品にも触れたのだろうか…。
とはいえ、演奏自体はあくまで感興豊かで心に迫ってくるのが、近年の高関の魅力。イタリアを好んだチャイコフスキーがその歌心と古典的形式を取り入れつつ、ロシアへの愛をほとばしらせたような名作「弦楽セレナーデ」は、いまは様々な解釈が知られており、彼がどう聴かせるか予想もつかず、注目の一曲。ヴェルディ作品では、最新のスコアを冷静に吟味して正しい奏法を見出しながら、ライヴでは熱きイタリア・オペラの魂を見せてくれるはず。高関のメッセージに注目する聴き手だけでなく、クラシック音楽の初心者にとっても、超の付く名曲たちをすばらしい演奏で体験できるチャンスとして、文句なしにお勧めの公演。感動的な「弦楽セレナーデ」の序奏の響きから、ラストの《アイーダ》凱旋行進曲のスペクタクルまで、楽しみは尽きない。
文:林 昌英
(ぶらあぼ 2017年6月号から)
第49回ティアラこうとう定期演奏会
6/3(土)14:00 ティアラこうとう
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
http://www.cityphil.jp/