森谷真理(ソプラノ)

大好きなセミラーミデのアリアを歌えるのが嬉しいです!

 2006年、METの夜の女王でセンセーショナルな成功を収めた森谷真理。14年秋にはびわ湖ホール《リゴレット》で初凱旋し、すでに日本のオペラ上演でも欠かせないプリマとなっている。6月にはHakuju Hallの『中嶋朋子が誘う 音楽劇紀行』に出演。
「再びこのシリーズに出演することができ、うれしいです。西洋の音楽がいかに劇の要素とともに変化してきたか、非常にわかりやすくプロデュースされている企画ですね。オペラはまず劇ありき、と私は思っています。台本に作曲家が音楽をつけているのが普通の演劇との大きな違い。そこに作曲家の解釈が入ってくるわけですね」
 『音楽劇紀行』は女優・中嶋朋子が音楽劇の歴史に誘う、エンタテインメント仕立ての全6回シリーズ(年2回開催)。演出家・田尾下哲が総合プロデューサー、作曲家・加藤昌則が音楽監督を務める。毎回バロック・オペラからミュージカルまでを通史的に紹介し、さらに各回ごとにテーマを設けて特定の時代をクローズアップする。シリーズ第3弾の今回はイタリア・オペラがテーマで、森谷はロッシーニ《セミラーミデ》のアリア〈麗しい光が〉ほかを歌う。
「セミラーミデのアリアは東京で歌うのは初めてですが、アメリカにいた頃から大好きでよく歌っていました。今回歌う中では特にアジリタ(音階などの俊敏なパッセージ)の要素の強いアリアです」
 昨年のシリーズ初回にも出演。《トロヴァトーレ》や《タイス》のアリアを歌った。
「実はあれがきっかけで、今年5月の三河市民オペラ《トロヴァトーレ》のレオノーラ役が決まりました。ですから私にとって、この『音楽劇紀行』はすごくラッキーなシリーズなのです。ちょうどこの数年間、レパートリーを少し変えているところで、レオノーラを歌えたことはとても大きいです。今年はほかにも、びわ湖ホールの《ラインの黄金》のフライア、東京二期会では、7月の《ばらの騎士》の元帥夫人、10月の《蝶々夫人》と、初役ばかり。レオノーラや蝶々夫人は当面の目標だった役で、年齢的にも経験的にもそろそろ大丈夫と思っての挑戦。私にとって大切な一年になっています。ぜひ全部観ていただだければと思います」
 前回の出演では少しばかりの心残りもあったそう。
「中嶋朋子さんと舞台上で関わる場面がなかったのが残念で…。今回に期待してます(笑)。彼女は独特の存在感があって素敵な方。立つだけで舞台の空気が引き締まる感じがします」
 現在はウィーン在住。海外での活発な活動の合間を縫うように帰国してステージに立ってくれるのは頼もしい限り。けっして聴き逃せない!
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ 2017年6月号から)

中嶋朋子が誘う 音楽劇紀行
第三夜 ロマン派オペラⅠ〜イタリア・オペラ
6/14(水)19:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700
http://www.hakujuhall.jp/