ミカ・ストルツマン(マリンバ)

マリンバとクラリネットが織りなす“最前線”のアルバム登場

ミカ&リチャード・ストルツマン
 マリンバとクラリネットのデュオによるCDは世界初だという。日本のマリンバ奏者ミカ・ストルツマンが、夫のクラリネット奏者リチャード・ストルツマンと録音したアルバム『デュオ・カンタンド』。彼女のジャンルを超えた幅広い人脈を物語るように、チック・コリアやジョン・ゾーン、大島ミチルらの提供作品が並ぶ。チック・コリア自身も即興演奏で参加した。
「予定ではチックの『シー・ジャーニー』を私たちがデュオで演奏して、そこに即興で加わってもらうつもりでした。でもスタジオで私たちの演奏を聴いた途端、『これはデュオで完成している音楽だから、僕は入れないよ』と断られてしまったんです。ところが私が落胆したのを察してか、チックはいきなり彼のマネージャーに連絡して、その曲のメロディ譜を取り寄せ、『これで3人でアドリブでやろうよ』って。私もリチャードもクラシックの演奏家なので、アドリブはジャズの人にはかなわないと思っていますが、チャンスを逃してはいけないと必死で。何の準備も打ち合わせもなかったのですが、4テイク目でOK。『シンプルなほどいい音楽になる時がある。それが今だ。これでいい』と褒めてくれました」
 熊本の天草出身。中学校の吹奏楽で打楽器に出会い、地元の音楽大学に進んだが、最初プロの演奏家になるつもりはなく、卒業後は小中学校の吹奏楽部を指導していた。ところが27歳の時、東京でカナダの打楽器アンサンブル「ネクサス」の演奏を聴いて衝撃を受ける。
「目からウロコ。あのように洗練された音を出す打楽器奏者になりたい、と思い、プログラムに載っていたメンバーのビル・カーンに手紙を書き、アメリカで1ヵ月間彼にレッスンを受けたのです。人生が変わったのはそこからだったと思います。何度かトロントやニューヨークに通い、最終的に2008年にニューヨークに移住しました」
 スーツケース2つだけを抱えての再スタートだった。もともとファンだったというストルツマンとのロマンスが芽生えたのもその頃。彼のバッハ「ゴルトベルク変奏曲」の録音で共演したのがきっかけだった。
「リチャードは音楽を咀嚼して完全に自分のものにしてから演奏する人。ものすごい練習量には、一緒にいて勉強させられます」
 タイトルの「カンタンド Cantando」は“歌うように”の意味。
「マリンバが一般の音楽ファンにコミュニケートできていない気がして歯がゆく思っていました。歴史に残る曲を選んだので、マリンバとクラリネットの新しいサウンドを、ぜひ音楽として聴いてください」
 また、6月には彼らのライヴも東京と高崎で開催されるので、アルバムを聴いてから足を運んでみてはいかがだろうか。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ 2017年4月号から)

CD『Duo Cantando』発売記念
リチャード&ミカ・ストルツマン
デュオリサイタル
6/27(火)19:00 ヤマハホール
問:アスペン03-5467-0081
http://www.aspen.jp/

6/21(水)19:00 高崎シティギャラリー
問:高崎シティギャラリー027-328-5050
http://www.takasaki-foundation.or.jp/gallery/

CD
『デュオ・カンタンド/ミカ&リチャード・ストルツマン』
日本コロムビア 
COCQ-85334
¥3000+税