下野竜也(指揮) 読売日本交響楽団

“永遠性”への憧れを歌うフィンジの知られざる大作


 “これぞ”という隠れ名曲を探し当てる発掘力、それをよく知られている作品と組み合わせ、バランスのとれたプログラムに仕立てる企画力、さらになんといっても安定感のある、ダイナミックな演奏を導くリード力。それぞれの能力を研ぎ澄ませ話題公演を連発する下野竜也は、音楽界でもいまやひときわ個性的なカラーを放っている。
 4月定期も練りに練ったコンサートが楽しめそうだ。まずは池辺晋一郎「多年生のプレリュード」。読響のポテンシャルを開放させるような豪快な前奏曲で、2011年の読響定期500回記念のために書かれ、初演の指揮も下野だった。大地に根を伸ばし繰り返し花を咲かせる多年生植物の名前通り、5年の年月を経て再演されることになった。その生命力は、後半披露されるフィンジ作品のワーズワースの詩句とも響きあうだろう。
 続いてベートーヴェンの交響曲第2番。古典派のスタイルを持ち、若い作曲家の勢いがあふれる曲で、パワフルな池辺作品に組み合わせたあたりに、下野らしい選曲の着眼点を感じる。
 そして後半は20世紀前半を生きたイギリスの知られざる作曲家ジェラルド・フィンジの代表作「霊魂不滅の啓示」が取り上げられる。これはイギリスのロマン派詩人ワーズワースのオードに付曲したもので、自然の美やピュアだった幼年期を回顧しながら、自らの憂いや永遠性への憧れを歌ったもの。広大な自然を前にした詩人の心の動きを、美しいメロディと壮大な管弦楽法で巧みに音にしている。
 青年の煩悶を歌うテノールには美声が求められるが、ロビン・トリッチュラーはイギリスを中心に頭角を現しつつある。合唱にソリスト集団ともいうべき二期会合唱団が入るのも面白そうだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年4月号から)

第557回 定期演奏会
4/14(木)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
http://yomikyo.or.jp