画期的なイタリア曲集で臨む初CD&初リサイタル
日本フィルの客演首席トランペット奏者として類い稀な存在感を放つオッタヴィアーノ・クリストーフォリが、12月に初のソロCDをリリースし、1月に『イタリアン・ネオロマンティコ』と題した初のリサイタルを行う。1986年イタリア・ウーディネ生まれの彼は、地元の音楽院を卒業後、国内の主要楽団に客演しながら、「一番好きな奏者」ハーセスの流れを汲むシカゴ響のメンバーに学ぶため、2年間米国に通った。そして2008年9月、兵庫県立芸術文化センター管に入団し、翌09年には日本フィルに移った。
「それまで日本との接点はなく、兵庫の募集はウェブサイトで知りました。しかし兵庫では見事な組織力に、日本フィルでは最初のリハーサルから演奏が完璧であることに驚かされました。それに日本フィルは皆が優しく温かい。この点はスペシャルだと思います」
互いに連動した今回のCDとリサイタルには、画期的な特徴がある。
「全てイタリア人作曲家の作品で、(『時の踊り』で有名な)ポンキエッリの協奏曲以外はコンテンポラリー。しかもCDの10曲中5曲が委嘱作で、残り5曲中4曲も世界初録音です。トランペットのCDといえば、もっぱらフランスやアメリカの曲かアレンジもの。イタリアのオリジナル曲集はおそらく史上初なので、ぜひ聴いて欲しいですね」
キーとなる作曲家は、委嘱作を2曲含むジャンパオロ・テストーニ。
「イタリア・ネオ・ロマンティックの先導者である彼から様々なトランペット曲を紹介され、優れた作品の多さを認識しました。そこで今回気に入った曲を選ぶと同時に、複数の作曲家に作品を委嘱しました」
もう1人、CDタイトル『稲妻〜Fulgor〜』の由来である「Aestatis Fulgor(夏の稲妻)」の作曲者クラウディオ・チンパネッリも重要だ。
「彼は私の演奏を聴いて曲を書いてくれた最初の作曲家。なのでその作品をタイトルにしました。またこれには『イタリアのトランペット曲が稲妻のように現れた』との意味もこめています」
コンテンポラリーといっても、あの唱歌「故郷」を主題にしたテストーニ「『ふるさと』による変奏曲」や、プッチーニのオペラに拠るルッケッティ「マノン・レスコー間奏曲」をはじめ、「技巧的には高度だが、音楽的には深みがあって聴きやすい作品ばかり」が並ぶ。
リサイタルでも「CDの大半の曲を演奏する」。ピアノはCDと同じくマルティーナ・フレツォッティ。「彼女は幼なじみで私の演奏を熟知し、イタリアでは作曲者の前で一緒に練習した」というから、態勢は万全だ。
12月には日本フィルの公演でロベルトの協奏曲の世界初演を行い、来年からは五重奏団「東京ブラス・ソロイスツ」の活動も始めるクリストーフォリ。「新しいアイディアは沢山ある」と語る彼の、清新で意欲的なCDとリサイタルに、ぜひ注目したい。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年12月号から)
オッタヴィアーノ・クリストーフォリ
トランペットリサイタル
イタリアン・ネオロマンティコ
2016.1/12(火)19:00 東京文化会館(小)
問:テレビマンユニオン03-6418-8617
http://www.tvumd.com
CD
『稲妻〜Fulgor〜』
日本アコースティックレコーズ
NARD-5050
¥3000+税
12/1(火)発売