日本オペラ振興会が2027/28シーズンのラインナップを発表! 3演目すべて新制作

 公益財団法人日本オペラ振興会(藤原歌劇団/日本オペラ協会)が10月30日に都内で会見を開き、2027/28シーズンのラインナップと新たな芸術体制について発表した。会見には、日本オペラ振興会理事長の小田全宏、副理事長の江原啓之、常務理事の斉田正子が登壇。さらに出演者を代表してソプラノの佐藤美枝子(ルチア役)、相樂和子( 阿古夜/紅天女役)、佐藤康子(アイーダ役)の3名が揃い、出演公演にかける意気込みを語った。

左より:斉田正子(日本オペラ振興会常務理事)、江原啓之(同副理事長)、小田全宏(同理事長)、
佐藤美枝子、相樂和子、佐藤康子

新たな芸術体制へ:伝統の継承と「団員」中心の組織へ

 日本オペラ振興会は、1981年に藤原歌劇団と日本オペラ協会が統合・合併して以来、それぞれの歴史と特色を尊重しながら日本のオペラ文化を牽引してきた。「各団体が培ってきた芸術的な伝統をさらに継承し、今後の活動をより一層発展させていく」必要があるとの判断から、新たな芸術体制を導入する。

 藤原歌劇団の芸術顧問には、長年イタリア・オペラの真髄を追求してきた林康子が、日本オペラ協会には、日本オペラの文化の発展に多大な貢献を果たしてきた郡愛子がそれぞれ就任する。「ふたりの豊かな経験と知見を礎に、各団体の芸術的な特色を明確にしながら、次の世代へ繋いでいく」考えだ。

小田全宏

 会見で特に強調されたのは、所属する約1100名の団員こそが「宝」であるという理念だ。新体制では、主役からアンサンブルに至るまでの選考を、複数人の審査員による厳正な「試唱会・指名オーディション」にし、現段階では「客演は行わない方針」だ。経験豊かなベテランから気鋭の若手、海外で活躍する実力派まで、すべての歌手に公平な機会を与えることで、「本物の声」による感動的な舞台を創り上げていくという。

若手の発掘と育成を掲げる3演目の新制作

 その体勢の中で組まれた2027/28シーズンラインナップが注目されるところだが、江原副理事長は「両団体がそれぞれ培ってきたものを舞台にどう活かしていくのかがキーポイント」と語り、3演目すべてが新制作で上演される。 

2027/28シーズンラインナップ

◾️藤原歌劇団公演/新国立劇場/東京二期会 合同制作
  ドニゼッティ:歌劇《ルチア》
2027.8/27(金)〜8/29(日) 新国立劇場 オペラパレス
指揮:柴田真郁 演出:岩田達宗
出演/佐藤美枝子、光岡暁恵(以上ルチア)、澤﨑一了、後田翔平(以上エドガルド)、大西宇宙、井出壮志朗(以上エンリーコ)、清水徹太郎、勝又康介(以上アルトゥーロ) 他
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

◾️日本オペラ協会 創立70周年記念公演
  日本オペラシリーズ No.90 美内すずえ原作・脚本/寺嶋民哉作曲 
 『ガラスの仮面』より《紅天女》新制作

2028.1/20(木)〜1/23(日) 新宿文化センター 大ホール

指揮:田中祐子 演出:太田麻衣子
出演:砂川涼子、相樂和子(以上 阿古夜/紅天女)、海道弘昭、松原陸(以上 仏師・一真) 他
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

◾️藤原歌劇団公演 Teatro OPERA Collection
  ヴェルディ:歌劇《アイーダ》新制作

2028.3/2(木)〜3/5(日)新宿区立新宿文化センター 大ホール
指揮:飯森範親  演出:岩田達宗
出演:小林厚子、佐藤康子(以上アイーダ)、笛田博昭、藤田卓也(以上ラダメス)、米谷朋子、山川真奈(以上アムネリス)、須藤慎吾、清水良一(以上アモナズロ)他
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 幕開けは、藤原歌劇団と新国立劇場、東京二期会の共同によるドニゼッティの傑作《ルチア》。同団の最大の強みである「声」を活かし、単なる技量披露にとどまらず、声を通して立ち現れる登場人物の愛と哀しみ、狂気を描く。歌手について江原は、「《ルチア》は宝の山なのです」と語る。

江原啓之

「円熟度が増し、日本の中の最高のルチアだと自負する」佐藤美枝子と光岡暁恵に、藤原歌劇団デビューとなるエドガルド役の後田翔平とエンリーコ役の大西宇宙、そして病からリハビリを経て藤原の舞台に復帰を果たすテノール・清水徹太郎がアルトゥーロを演じるのも大きな注目だ。大西の起用については、「この《ルチア》を佐藤美枝子さんと歌いたい、そして藤原の舞台に立ちたいと、団員になってくださった。その熱意を財団としても支えたい」と江原。

 佐藤は、「ルチアで藤原歌劇団にデビューし、コンクール、リサイタルなどで何度も歌ってきた大切な役です。これまでの歩みと蓄積をもとに、より良いものが演じられるのではないかと思います。尊敬する柴田真郁マエストロ、そして駆け出しの頃に立ち振る舞いなど基本的なことを教わった師匠のような存在の岩田達宗さんによる演出で歌えることは、大きな喜びです。また、共演者の中に、私自身が復帰を待ち望んできた方の名前があり、同じ舞台に立てることも胸が熱くなります。ベルカントの真髄である声とテクニックを重視して勉強してきましたので、その集大成として演じることを、私自身も楽しみにしております」と語る。

佐藤美枝子

 続く《紅天女》は、2028年に創立70周年を迎える日本オペラ協会の記念公演。漫画『ガラスの仮面』の作中劇をオペラ化したこの舞台は2020年の初演され、大きな反響を呼んだもの。あらたに新制作で上演することは、「日本オペラの作品を創り、繰り返し上演すること、またそれを次の歌い手、観客へと手渡していくことが責務である」という想いがこもっている。主役の阿古夜/紅天女には砂川涼子と相樂和子が配された。指揮は、日本オペラ協会の新作をはじめ数多くの作品を指揮してきた田中祐子。

 初演時にアンダースタディーで関わっていたという相樂。
「《紅天女》は2020年の初演時から、ずっと心の中に生き続けている作品です。すべての役の歌やセリフ、オーケストラの音まで暗譜するほど、この作品に没頭していました。あれから6年が経ったいまでも、その音楽のすべてを覚えています。今回この役をいただき、あの時から自分のなかで続いていた紅天女という時間が、再び動き出したような特別な想いがありました。 また能のお稽古を続けており、歌だけでなく、身体の動きや所作、間の取り方、日本の伝統芸能が持つ精神性を学びながら、阿古夜、紅天女という存在に少しでも近づきたいと思っています」

相樂和子

 そして、藤原歌劇団として1993年(林康子主演)以来、実に35年ぶりの上演となる《アイーダ》。藤原歌劇団が誇るソリスト陣の圧倒的な歌唱と、重厚な合唱の響きを大スケールで魅せるスペクタクル。「一人ひとりの切実な想い、愛する人や祖国への気持ち、自分の立場や使命の間で揺れ動く心を、藤原の”声の力”で描いていく」(江原)。

 アイーダを演じる佐藤康子は、「イタリア・シチリアでの上演をはじめ、これまで大切に温めてきたアイーダ役を、歴史ある藤原歌劇団の本公演で歌わせていただけることを心から光栄に思います。1993年にアイーダを歌われた林康子先生をはじめ、輝かしい先達の歴史を思うと身の引き締まる思いです。 《アイーダ》は絢爛豪華な音楽、凱旋のマーチが注目されがちですが、父アモナズロとの二重唱などに代表されるように、登場人物の葛藤や血が迸るような情熱が緻密に描かれています。藤原が誇る『声のドラマ』を全身全霊で表現したいです」

佐藤康子

 2028年に日本オペラ協会が創立70周年を迎え、翌29年には藤原歌劇団が創立95周年と、日本オペラ振興会は大きな節目が続く。新体制のもと、歌手たちの声の力を原動力に、その先の未来を見据えて歩みを進めることだろう。まずは、その着実な一歩に期待して新シーズンを待ちたい。

日本オペラ振興会
https://www.jof.or.jp