英国が誇る声楽アンサンブルの雄、タリス・スコラーズが待望の再来日!

©Hugo Glendinning

 ピーター・フィリップスとタリス・スコラーズがまたやってくる。1980年代以降、もう20回近い来日になるだろうか。ルネサンス・ポリフォニー声楽曲演奏に圧倒的な精密さと豊かな情感で新境地を拓いたこの稀有な英国のア・カペラ・グループは、半世紀を超える歩みの中で徐々にメンバーを交代させつつ、その特質をひたすら磨き続けてきた。まず、その演奏にまた邂逅できる喜びは大きい。

 そして彼らは、同じことに繰り返し磨きをかけてきただけでは決してない。当初16世紀のポリフォニー教会音楽が中心だった彼らのレパートリーは、「ア・カペラ」を原則としつつ、その前後に大幅に拡大した。遡っては中世の聖歌、下ってはバロック、古典派、ロマン派を飛び越えての現代作品である。

 今回の来日公演のプログラムは、そのような彼らの現在地を示す内容だ。彼らの十八番であるアレグリ「ミゼレーレ」をはじめ、オブレヒト、パレストリーナ、ラッスス、ビクトリアらルネサンス教会音楽の粋はもちろん、中世の神秘主義者ヒルデガルト・フォン・ビンゲンの聖歌、そして現代エストニアのアルヴォ・ペルトの作品が縦横に組み合わされる。それぞれの時代様式を正確に描出しながら、各曲に通底する時代を超えた共通点が互いに呼び交わし合う、そんな時間がコンサートホールに出現することだろう。その共通点の重要な一つが、「祈り」であることは間違いない。この混迷の時代に何より必要な普遍の「祈り」が響く。

文:矢澤孝樹

(ぶらあぼ2026年7月号より)

タリス・スコラーズ
2026.7/15(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:テンポプリモ 03-3524-1221
https://tempoprimo.co.jp

他公演
2026.7/16(木) 武蔵野市民文化会館(小)(完売)
7/19(日) 神奈川県立音楽堂(完売)
※公演によりプログラムは異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。


矢澤孝樹 Takaki Yazawa

1969年山梨県塩山市(現・甲州市)生。慶應義塾大学文学部卒。水戸芸術館音楽部門主任学芸員を経て現在ニューロン製菓(株)及び(株)アンデ代表取締役社長。並行して音楽評論活動を行い、『レコード芸術online』『音楽の友』『モーストリークラシック』『ぶらあぼ』『CDジャーナル』にレギュラー執筆。朝日新聞クラシックCD評選者および執筆者。CD及び演奏会解説多数。著書に『マタイ受難曲』(音楽之友社)。ほか共著多数。