ドイツゆかりの指揮者・上岡敏之がディーヴァ イレーネ・テオリンと織りなすドイツ・プログラム

左:上岡敏之
右:イレーネ・テオリン ©Chris Gloag

 6月の読響マチネーシリーズは上岡敏之の指揮によるドイツ音楽集。読響は上岡との付き合いが日本で最も長く、たびたび共演して抜群の相性を示している。しかも上岡は、ドイツの歌劇場のコレペティートルやカペルマイスターとしてキャリアをスタートさせ、ザールラント州立歌劇場やヴッパータール市立歌劇場等の要職を歴任するなど、この地を拠点に活躍してきたマエストロ。すなわち今回は極め付きの内容であり、ゴージャスかつ緻密な読響サウンドを生かした重層的な快演が期待される。

 前半はワーグナーの作品。まず《タンホイザー》序曲では本場仕込みの劇的表現が存分に発揮される。おつぎは官能的で情熱的な「ヴェーゼンドンク歌曲集」。ここはスウェーデンに生まれた現代を代表するドラマティック・ソプラノ、イレーネ・テオリンの独唱が心強い。彼女は、ウィーン国立歌劇場やバイロイト音楽祭をはじめとする最高峰の舞台に出演を重ねている名歌手で、《トリスタンとイゾルデ》のイゾルデや《ニーベルングの指環》のブリュンヒルデといったワーグナーの諸役を得意としている。ゆえに《トリスタン〜》を予告した本歌曲集はピッタリの演目。強靭かつ陶酔的な歌声を聴かせてくれること必至だ。

 後半はブラームスの交響曲第4番。古い様式と後期ロマン派の豊麗さが融合した傑作だ。上岡の特徴は一からスコアを見直して構築する清新な音楽。ここもお馴染みの名曲の新たな魅力が耳を喜ばせるに違いない。加えて、世評をニ分したワーグナーとブラームスの違い、あるいは意外な共通点を体感できる点も興味を倍加させる。

文・柴田克彦

上岡敏之(指揮) 読売日本交響楽団
第288回 土曜マチネーシリーズ 2026.6/27(土)
第288回 日曜マチネーシリーズ 2026.6/28(日)
各日14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
https://yomikyo.or.jp


柴田克彦 Katsuhiko Shibata

福岡県生まれ。音楽マネージメント勤務を経て、フリーの音楽ライター・評論家&編集者となる。雑誌、コンサート・プログラム、Web、宣伝媒体、CDブックレットへの、取材・紹介記事や曲目解説等の寄稿、プログラム等の編集業務を行うほか、講演や講座も受け持つなど、幅広く活動中。著書に『山本直純と小澤征爾』(朝日新書)、 『1曲1分でわかる! 吹奏楽編曲されているクラシック名曲集』(音楽之友社)。