アンネ・ソフィー・フォン・オッター(メゾソプラノ)

音楽と言葉がもたらす、大切な“何か”を体験してほしい

©Mats Baeker
©Mats Baeker

 様々なジャンルに応じた多彩なテクニックで美声を操り、世界中の聴衆を魅了し続ける人気メゾソプラノのアンネ・ソフィー・フォン・オッター。今秋、9年ぶりとなる来日で、同じスウェーデン出身の名ソプラノ、カミラ・ティリングと共に、ジョイント・リサイタルを開く。「歌曲では、私たち歌い手がとても多くのことを表現することが可能です」とフォン・オッター。「お届けする音楽と歌、そして、旋律と共にある歌詞こそ、私たちのメッセージの全て」と語る。
「今回の選曲に関しての私とカミラのコンセプトは、私たちの母国の歌姫ジェニー・リンド(1820〜87)が歌ったであろうプログラムを組むことです。リンドは『スウェーデンのナイチンゲール』と称賛され、マイアベーアも崇拝したソプラノでした。彼女は、メンデルスゾーンやスウェーデンの作曲家リンドブラードが歌曲を献呈し、グリーグ作品も愛唱していました。そして、母国のもう1人の名ソプラノ、ビルギット・ニルソン(1918〜2005)にも想いを馳せ、彼女に縁のある、R.シュトラウスで締め括る構成にしたのです」
 共演のティリングについては「美しい声を持ち、人間的にも素晴らしい」と語る。
「ずっと一緒にツアーをしたいと思っていましたし、きっと皆さんも共演を喜んで下さるに違いない、と考えました。私たちの声は、美しいハーモニーを生むはずです」
 また、ステージを共にするピアノのジュリアス・ドレイクを「彼ほど巧みに歌い手とその声に寄り添い、その要求に応えてくれるピアニストを見つけるのは、容易ではありません」と評する。
 古楽から現代音楽、そしてポップスまでの幅広いジャンルで、“言葉を伝える”ための最上の手段を常に模索する。
「私は『言葉は歌にとって、重要な要素である』こと、そして『歌うという行為を通じて、必ず“何か”を伝えなければならない』ということも学びました。そして、単に綺麗な声で歌うだけでは全く不十分で、情感を伝えることこそが重要なのです。そのために、地道な努力と想像力が求められるのです」
「“音楽をすること”は、とても大きな喜びと知的な刺激を、私に与えてくれます。様々な音楽家との出逢いや、彼らと共に情熱をもって高みを目指すこと、そして、最良のものを表現することを、これまで愛してきましたし、これからも愛し続けるでしょう。そして、私の究極の目標は、音楽と言葉がもたらす、情熱や感情の大切な“何か”を、聴いて下さる人々へ伝えること。私の歌を通じて、そんな“何か”を体験してもらえれば、と常に願っています」
取材・文:寺西 肇
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年9月号から)

アンネ・ソフィー・フォン・オッター and カミラ・ティリング in リサイタル
9/25(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:アスペン03-5467-0081
http://www.aspen.jp