映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』

少年の歌への情熱と成長を描く

© 2014 BOYCHOIR MOVIE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. © Myles Aronowitz 2014
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© Myles Aronowitz 2014

 1937年設立のアメリカ少年合唱スクール(ABS)はニュージャージー州プリンストン市にある全寮制の音楽学校。世界中から集まった9〜14歳の少年たちに厳しい学業と優れた合唱を指導するプログラムで知られ、国内外で年間200ものツアーを行い(定期的に来日公演も行っている)高評価を得ている。そんな実在のユニークな合唱団をモデルに「少年が大人へと成長する、そのわずか数年の間だけ輝ける」天使の歌声たちの、知られざる実状を描いたのが映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』。
 複雑な家庭環境に育った問題児ステット(ギャレット・ウェアリング)が、名門校への入学をきっかけに歌への情熱を膨らませ、自ら道を切り拓き成長する物語だ。監督が『グレン・グールドをめぐる32章』や『レッド・バイオリン』のフランソワ・ジラールだけに、音楽映画としてのクオリティも非常に高く、ステットが類い稀な美声で歌い上げるフォーレ「レクイエム」の〈ピエ・イエス〉を始め、ブリテン「キャロルの典礼」から童謡〈ほたるこい〉(日本ツアー用の曲という設定)まで、ABSの全面協力による合唱シーンが素晴らしい。特にクライマックスのヘンデル「メサイア」はコアなファンをも唸らせるはず。
 少年たちを厳しくも深い愛情で導く団長役のダスティン・ホフマンを中心に、ショウ・クワイアーの世界を描いた人気TVドラマ『グリー』のケヴィン・マクヘイルらが脇を固めたキャスト陣も魅力。大人になった“天使たち”への応援歌のようなジョシュ・グローバンによるエンディング曲も感動を呼ぶ。
文:東端哲也
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年9月号から)

9/11(金) TOHOシネマズシャンテ 他 全国ロードショー
http://boysoprano.asmik-ace.co.jp