廣瀬心香 ヴァイオリンリサイタル——念願のシューベルト「幻想曲」で現在地を示す

 ヴァイオリニスト廣瀬心香が12月、リサイタルを開催する。桐朋学園大学からベルリン芸術大学に学び、ソリスト活動のほか、2019年結成の「TRIO VENTUS」や22年結成の「Eureka Quartet」といった室内楽団体の活動もよく知られる廣瀬。今回は、学生時代にも共演していたというピアニストの三又瑛子と共に、万全の状態で待望のリサイタルに臨む。

 プログラムも意欲的だ。まずヤナーチェクのソナタ。ユニークな語法による濃厚な情緒が際立つ逸品で、一気に廣瀬のヴァイオリンの世界に引き込む。そしてシューベルトの「幻想曲」。最晩年の恐ろしいほどに透徹した響きと生命力にあふれた傑作で、大変な難曲としても知られる。廣瀬の念願の作品とのことで、強い覚悟の伝わる注目の一曲ともなる。続いて同じウィーンで世紀をまたぎ、ウェーベルン「4つの小品」で十二音技法の生み出す美を追求。メインはフランクの名ソナタで、ロマンティックなヴァイオリン&ピアノのデュオの魅力を存分に示す。

文:林 昌英

(ぶらあぼ2025年11月号より)

廣瀬心香 ヴァイオリンリサイタル
2025.12/10(水)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:クリンゲルアソシエイツ klingelassociates@gmail.com 
https://www.mikahirose-violin.com

他公演 
2025.11/16(日) 宮崎/都城市ウエルネス交流プラザ ムジカホール
(クリンゲルアソシエイツ klingelassociates@gmail.com)
※公演によりプログラムは異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。


林 昌英 Masahide Hayashi

出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。