1月に急逝した秋山和慶と日本センチュリー響の昨年クリスマスのライブで、秋山最後の交響曲録音。なんと豊かなブラームスだろうか。立派で瑞々しく、歌にあふれ、雄渾。筆者が4年前に体験できた彼らのブラームスも同様で、「こんなブラームスを聴きたかった!」と心底から思わせてくれる貴重な名コンビだった。改めて録音に触れると、細かい彫琢はもちろん、ときに思い切った表現(展開部の大きいリテヌート!)など、細密なニュアンスの豊富さにも気づかされる。それを自然体でできる秋山の“匠の技”。寂しさもつのるが、せめて最後にこの録音が遺されたことを感謝したい。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2025年11月号より)
【information】
CD『ブラームス:交響曲第3番/秋山和慶&日本センチュリー響』
ブラームス:交響曲第3番
秋山和慶(指揮)
日本センチュリー交響楽団
収録:2024年12月、ザ・シンフォニーホール(ライブ)
マイスター・ミュージック
MM-4546 ¥3520(税込)

林 昌英 Masahide Hayashi
出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。



