第14回 世界バレエフェスティバル

まさにバレエ界の“いま”を俯瞰する祝祭

第13回世界バレエフェスティバルより Photo:Kiyonori Hasegawa
第13回世界バレエフェスティバルより
Photo:Kiyonori Hasegawa
 3年に一度、バレエファンを熱狂させる世界バレエフェスティバル。そのメインイベントは、40人近くが出演するA・B2種類のミックス・プロだ。ルグリやマラーホフ、ヴィシニョーワ等の常連に加えて、マチアス・エイマンやデヴィッド・ホールバーグ等が初参加する。世代交代が進むバレエ界の“いま”を俯瞰できる人選である。
 そのなかで異彩を放つのは、パリ・オペラ座バレエ団の往年のエトワール、イザベル・ゲランとオレリー・デュポン。ゲランは同じく元パリ・オペラ座のマニュエル・ルグリと組んで、ルグリが信頼を寄せる振付家パトリック・ド・バナの現代作品を踊る。デュポンは現役エトワールのエルヴェ・モローと共に、昨秋、同団芸術監督に就任したバンジャマン・ミルピエ作品に出演。パリ・オペラ座の新旧の輝きに目を凝らしたい。
 もう一つのサプライズは、マリインスキー劇場で踊り、現在はモスクワ音楽芸術劇場バレエの芸術監督を務めるイーゴリ・ゼレンスキーが、古巣であるニューヨーク・シティ・バレエのアシュレイ・ボーダーを相手役に選んだこと。意外なコンビが華を添える。
 2週間にわたって繰り広げられる祝祭の開幕を飾るのは、全幕特別プロ『ドン・キホーテ』。東京バレエ団の得意演目で、旬のスターの競演が実現する。
 女性主人公キトリ役は、英国ロイヤル・バレエ団(RB)の元プリンシパル、現在はイングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)に籍を置くアリーナ・コジョカル。さる6月に東京バレエ団の『ラ・バヤデール』に客演、薄幸の舞姫ニキヤを情感たっぷりに演じたことが記憶に新しい。今回はがらりとイメージを変え、お茶目な町娘に変身する。
 バジル役は、昨年、ENBからRBに移籍したワディム・ムンタギロフ。日本ではすでに『ジゼル』や『白鳥の湖』で主役を務めているが、来日毎に品格とスケールを増している伸び盛りの俊英ゆえ、熟達の演技力とテクニックで鳴らすコジョカルとの競演で、新しい一面を見せてくれることだろう。
 最後にお目見えするのが、一回限りのガラ。古典パ・ド・ドゥに加えて、パリ・オペラ座のベランガールやハンブルク・バレエの大石裕香の振付作品もピックアップされた。この公演のフィナーレで上演される、抱腹絶倒のサプライズ演目を楽しみにしている観客も多いことだろう(当日発表ゆえ、上演の有無は未確定)。
 14回目を数える世界バレエ・フェスティバル。果たして、今回はどのような伝説が生み出されるのだろうか。
文:上野房子
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年8月号から)

全幕特別プロ『ドン・キホーテ』 7/29(水)19:00 
Aプロ 8/1(土)〜8/6(木)
Bプロ 8/8(土)〜8/13(木)
ガラ公演 8/16(日)14:00 
東京文化会館 
問:NBSチケットセンター03-3791-8888
http://www.nbs.or.jp