
ポーランドを代表するオーケストラ、シンフォニア・ヴァルソヴィア(「ヴァルソヴィア」はワルシャワのポーランド語読み)が、指揮者クリスティアン・アルミンクとともに日本ツアーを行う。「故国の心ショパン」を意識したプログラミングで巡るこのツアーには、かのショパン国際コンクールとゆかりの深いピアニストである反田恭平、イーヴォ・ポゴレリッチ、マルタ・アルゲリッチ、そして小林愛実という豪華なソリストたちが顔を揃える。小林にとってシンフォニア・ヴァルソヴィアとの共演は、2016年以来の3回目だという。

「ヴァルソヴィアの音色には、ポーランドらしいノスタルジックで豊かな響きがあり、派手さよりは繊細な音楽を聴かせてくれるオーケストラです。もともと室内管のような形態で始まった楽団なのだそうで、そのためか、ソリストと一緒に自由なイメージを膨らませながら、親密に音楽を作れるオーケストラといった印象があります。今回演奏するショパンの協奏曲第1番も、ロマン派らしいテンポの揺れを楽しんだり、お互い臨機応変に音楽作りができそうです。
共演は久々ではありますが、私がこれまでコンサートやコンクールでポーランドを訪れた時には、シンフォニア・ヴァルソヴィアの方々とお会いしたり、コンサートを聴かせてもらったりしてきましたから、すぐに打ち解けた雰囲気で演奏できると思います」

タクトを振るうアルミンクとは今年の4月にもモーツァルトの協奏曲で共演したばかり。ショパンの協奏曲の共演経験もある。
「アルミンクさんは、見た目はクールな印象ですが、お人柄は穏やかで優しく、父親的な包容力のある方です。音楽作りは細やかで、リハーサルでは『ここはどう弾きたい?』と尋ねてくださるなど、ソリストに寄り添ってくれるマエストロです。今回の共演もとても心強いです。
またこのツアーでは、アルゲリッチさんやポゴレリッチさんといった大御所とご一緒するので、よい緊張感もありますね。ポゴレリッチさんとお会いするのは初めてなのです。リハーサルでお会いできたら、どんな会話ができるのか、ちょっとドキドキしますね。この4名が協奏曲のソリストとして同じツアーに臨む機会は、とても貴重だと思っています」


ショパン国際ピアノコンクールの他、数々のコンサートで演奏してきたショパンのピアノ協奏曲第1番。あらためてどんな思いで臨むのだろうか。
「この作品を初めて弾いたのは14歳か15歳でしたので、その頃から大切にしてきた作品で、自分の中では変わらない部分もあるとは思います。ただ実際には、弾くたびに変わっていく作品でもあります。やはり4年前のショパンコンクールで弾いたときの演奏とは、今は全然違っているかなと思います。コンクールの演奏については、周囲からさまざまな感想をいただきましたが、私自身としては、あの場で弾きたいように弾けた、表現したいことができたと思っています。今回はアルミンクさんとヴァルソヴィアとの共演でどんな演奏になるのか、私自身も楽しみです」
取材・文:飯田有抄
(ぶらあぼ2025年10月号より)
クリスティアン・アルミンク指揮 シンフォニア・ヴァルソヴィア 日本ツアー2025
2025.10/4(土)14:00◆、10/6(月)19:00 すみだトリフォニーホール
10/9(木)19:00、10/10(金)19:00◆ 大阪/住友生命いずみホール
10/12(日)15:00 京都コンサートホール◆
問:カジモト・イープラス050-3185-6728
https://www.kajimotomusic.com
他公演
10/5(日) NHKホール◆(NHKプロモーション050-5541-860)
10/7(火) 愛知県芸術劇場 コンサートホール◆(CBCテレビ 事業部052-241-8118)
※小林愛実は◆に出演。公演によりプログラムが異なります。
詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。

飯田有抄 Arisa Iida(クラシック音楽ファシリテーター)
音楽専門誌、書籍、楽譜、CD、コンサートプログラム、ウェブマガジン等に執筆、市民講座講師、音楽イベントの司会等に従事する。著書に「ブルクミュラー25の不思議〜なぜこんなにも愛されるのか」「クラシック音楽への招待 子どものための50のとびら」(音楽之友社)等がある。公益財団法人福田靖子賞基金理事。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Macquarie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。


