フィンランドの名匠、ヨーン・ストルゴーズが2つのプログラムで都響に登場!

左:ヨーン・ストルゴーズ ©Marco Borggreve
右:ヴェロニカ・エーベルレ ©Louie Thain

 フィンランド出身のヨーン・ストルゴーズが東京都交響楽団の定期演奏会に登場する。2023年1月にマデトヤの交響曲第2番ほかで好評を博したストルゴーズだが、今回は10月のBシリーズとCシリーズで2つのプログラムを指揮する。

 Bシリーズのメイン・プログラムは没後50年を迎えたショスタコーヴィチの交響曲第11番「1905年」。ロシア皇帝の軍隊が民衆のデモに対して発砲した「血の日曜日事件」が題材となった問題作である。ロシア第一革命の発端となった事件を描いていることから、西側諸国からはプロパガンダの音楽とみなされることも多かった作品だが、近年は歴史的な文脈を超えて20世紀の交響曲としての再評価が進んでいる。その壮絶さをストルゴーズと都響はいかに描くのか。さらにこの日は現代フィンランドの作曲家、オウティ・タルキアイネンの「極北の真珠−室内管弦楽のための協奏曲−」が日本初演される。気候変動を憂う作曲者が北極圏の生態系を題材にした作品だ。都響の名手たちの技量が発揮されそうだ。

 Cシリーズでは名手ヴェロニカ・エーベルレの独奏によるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲と、シベリウスの交響曲第3番が組み合わされる。こちらはぐっとクラシカルなプログラムだ。コンパクトな編成によるシベリウスの交響曲第3番は明瞭にして爽快。喜びにあふれた賛歌を堪能したい。なお、ベートーヴェンの協奏曲では、現代ドイツの作曲家イェルク・ヴィトマンによるカデンツァが日本で初披露される。ピリッとモダンなスパイスがきいたカデンツァが驚きをもたらす。

文:飯尾洋一

(ぶらあぼ2025年9月号より)

ヨーン・ストルゴーズ(指揮) 東京都交響楽団
第1027回 定期演奏会Bシリーズ
 
2025.10/1(水)19:00 サントリーホール
第1028回 定期演奏会Cシリーズ
10/5(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:都響ガイド0570-056-057 
https://www.tmso.or.jp
※公演によりプログラムが異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。


飯尾洋一 Yoichi Iio

音楽ジャーナリスト。著書に『クラシックBOOK この一冊で読んで聴いて10倍楽しめる!』新装版(三笠書房)、『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)、『マンガで教養 やさしいクラシック』監修(朝日新聞出版)他。音楽誌やプログラムノートに寄稿するほか、テレビ朝日「題名のない音楽会」音楽アドバイザーなど、放送の分野でも活動する。ブログ発信中 http://www.classicajapan.com/wn/