欧州ツアー直前!チョン・ミョンフンと小曽根真が東京フィル定期で響かせる20世紀傑作の魂

左:チョン・ミョンフン ©Takafumi Ueno
右:小曽根 真 ©Yosuke Suzuki

 東京フィルの10月定期はエキサイティングな公演になりそうだ。指揮は名誉音楽監督のチョン・ミョンフン。プログラムがおもしろい。バーンスタインの『ウエスト・サイド物語』より「シンフォニック・ダンス」、小曽根真のピアノによるガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」、プロコフィエフのバレエ音楽「ロメオとジュリエット」より、という組み合せだ。

 バーンスタインとプロコフィエフの両曲はともにシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を題材とした作品。かたやミュージカル、かたやバレエのための音楽という対照がある。チョン・ミョンフンと東京フィルがこれまで《ファルスタッフ》《オテロ》《マクベス》といったシェイクスピア原作のオペラを演奏会形式でとりあげてきたことを考えれば、シェイクスピア・シリーズの番外編とみなすこともできるだろう。

 ガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」では、なんといっても小曽根真のピアノが聴きもの。これまでにくりかえし演奏してきた曲目だが、どんな即興演奏が飛び出すかわからない期待感があり、毎回が新鮮だ。音楽は一期一会のものであることを実感できるだろう。

 なお、この公演後、東京フィルはチョン・ミョンフンとともにヨーロッパ・ツアーへと出発し、ベルリンを皮切りに8都市を巡る。10月定期のプログラムはツアーでも披露される。ツアー直前の気持ちの高まりが演奏にも反映されるのでは。

文:飯尾洋一

(ぶらあぼ2025年9月号より)

チョン・ミョンフン(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
第1024回 オーチャード定期演奏会

2025.10/5(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール
第1025回 サントリー定期シリーズ 
10/16(木)19:00 サントリーホール
第174回 東京オペラシティ定期シリーズ
10/20(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522 
https://www.tpo.or.jp


飯尾洋一 Yoichi Iio

音楽ジャーナリスト。著書に『クラシックBOOK この一冊で読んで聴いて10倍楽しめる!』新装版(三笠書房)、『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)、『マンガで教養 やさしいクラシック』監修(朝日新聞出版)他。音楽誌やプログラムノートに寄稿するほか、テレビ朝日「題名のない音楽会」音楽アドバイザーなど、放送の分野でも活動する。ブログ発信中 http://www.classicajapan.com/wn/