甘美な時間に身をまかせて
世にラヴ・ソングの名曲が溢れているように、クラシックの世界にも“愛”にまつわる数多の楽曲が存在する。そんな甘くて切ない名旋律ばかりを集め、日本が誇る4人のプレイヤーが、様々な編成によって奏でてくれる夢のコンサート『音楽で“恋”する午後』が開催される。
ピアノを担当するのは、ポーランド政府よりお墨付きを貰うほどの“ショパン弾き”の名手にして、ショパンピアノ作品全曲コンサートを開くなど、精力的に活動している横山幸雄。得意の「別れの曲」に始まり、元々はドイツの詩人フライリヒラートによる歌曲として書かれたリスト「愛の夢 第3番」などで語りかけた後、室内楽での評価が特に高いチェロの上村昇との共演で、エルガー「愛の挨拶」、カサド「親愛なる言葉」、フォーレ「夢のあとに」などで甘美な世界を紡ぎ出す。また都響のソロ・コンサートマスター、矢部達哉と「3つのロマンス 作品94」、ヴィオラの第一人者である川本嘉子と「トロイメライ」や「献呈」など、シューマンが愛する妻クララに込めたありったけの愛情も披露される。更には、4人揃って演奏するピアノ四重奏曲も、やはりシューマン作品。クララと結ばれた幸せの絶頂期に書かれたとされるこの曲、聴き所はこちらの顔が赤らむ程に一途な想いが溢れ出す第3楽章の「アンダンテ・カンタービレ」かも。ともあれ夏の日の昼下がり、19世紀に音楽の巨匠たちによって生まれた愛の調べに、ゆったりと身をまかせてみては?
文:東端哲也
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年6月号から)
7/8(水)13:30 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp