ルドルフ・ビーブル(指揮)

門外不出の音楽祭、初の海外公演が実現!


 世界遺産のオーストリア・ノイジードル湖上で開催されている世界最大のオペレッタ・フェスティバル『メルビッシュ湖上音楽祭』。今まで門外不出だった同音楽祭初の海外公演が9月に日本で開催される。演目はオペレッタのなかでも特に人気の高い《こうもり》。今回の日本公演を指揮するルドルフ・ビーブルは、2008年まで同音楽祭の芸術監督を務め、ウイーン・フォルクスオーパーでもおなじみのウィンナ・オペレッタ界を代表する巨匠だ。昨年のフォルクスオーパー来日公演で海外公演を終わりにすると宣言していたビーブルだったが、メルビッシュ日本公演だけは特別に指揮をすると自ら申し出た。
「私のキャリアは、グラーツでオペレッタの指揮者としてスタートしました。1973年にウィーン・フォルクスオーパーから呼ばれ、しばらくはオペラも多く指揮しましたが、次第にオペレッタに専念するようになったのです。オペレッタと一口に言っても、すべて同じではありません。J.シュトラウスの作品と、ミレッカー《乞食学生》、レハールやカールマンの作品、そして、それらの後に書かれた作品とは、はっきり違いをつけて上演すべきです。私はフォルクスオーパーで、そうした考えでそれぞれのオペレッタに取り組んできました」
 オペレッタを指揮する上で心がけていることは何だろうか。
「多くのオペレッタは、大切なことが楽譜に書かれていません。これは伝統と大きな関わりがあります。私が指揮したプロダクションを別の方が指揮すれば、全然別の作品になってしまうのはそのためです。私は、オペレッタの音楽の楽しみを伝えることを最優先に指揮し、自分の指揮するプロダクションはいつも自分の大好きな作品として取り組んできました。それでなければうまくいきません」
 メルビッシュ湖上音楽祭では62年に《ジプシー男爵》を指揮してデビュー。その後数々のプロダクションに関わっている。
「《ジプシー男爵》は63年・64年と3年間続けて指揮をしました。その後、94年には《乞食学生》を上演しました。マルティナ・セラフィンやミリヤーナ・イーロッシュらが出演した、とても評判の良い舞台でしたね。その際に、現在のオーケストラ(メルビッシュ祝祭管弦楽団)が結成されたのです。優秀なメンバーのおかげで、最初から驚くほどうまくいきました。地元・ブルゲンラント州には2つの音楽大学があり、一つは弦楽器で有名、もう一つは管楽器で有名なのですが、その2校からメンバーが集まり、初めて一緒に演奏したのです。現在でも当時のメンバーの約8割が残っています」
 メルビッシュで最も印象に残っているプロダクションはレハールの《ジュディッタ》(2003年)だという。
「舞台美術も素晴らしいプロダクションでした。レハール自身『私はオペラを書いた』と言っているぐらい、確かに8割方オペラと言ってもよい作品です」
 ビーブルにとってメルビッシュとはどういう存在なのだろうか。
「私の人生の重要な部分であったと言えます。でも今となっては、1年で最も美しい季節である6月〜8月の3ヵ月間を、すべてオペレッタに費やしてしまうことを、遠慮させていただきたい歳となりました。日本の聴衆の皆様は本当にすばらしく、日本で指揮できることは、この上ない喜びです。また、皆様にお会いできることを楽しみにしています」
取材協力:プロアルテムジケ 構成:編集部
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年7月号から) 

メルビッシュ湖上音楽祭 日本公演
J.シュトラウスⅡ《こうもり》
9/10(木)15:00、9/11(金)17:00 河口湖ステラシアター
問:プロアルテムジケ03-3943-6677
http://www.proarte.co.jp

他公演
9/3(木)愛知県芸術劇場大ホール
問:東海テレビ放送事業部052-954-1107
9/5(土)ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ
問:084-928-1810
9/6(日)静岡県コンベンションアーツセンター グランシップ(中)
問:054-289-9000
9/8(火)福岡シンフォニーホール
問:092-725-9112