藤原道山(尺八)

デビュー15周年に“出会い”の集大成を

 尺八の新たな魅力を拓く第一人者として、ソロだけでなく幅広いジャンルの演奏家やアーティストとコラボを重ね、多岐に渡って魅力的な音楽活動を展開している藤原道山。3月にリリースしたデビュー15周年を記念するベストアルバム『道』では、10周年ベスト『天-ten-』以降の5年間の活躍を集約して注目を集めた。
「自分でもちょっと詰め込み過ぎた気もしないではありませんが(笑)、この5年で音楽的な幅の広がりも内容も濃くなってきていると思うのです。さらにこれまでの歩みだけではなく、尺八クァルテットのための小品2題や高野山での体験を音にした独奏曲などの書き下ろし楽曲も加えて、未来への“道”を指し示す1枚にしたかった」
 本作は、古川展生(チェロ)と妹尾武(ピアノ)からなる3人組ユニット「-古武道-」のナンバーをはじめ、ウィーン・フィルのメンバーで結成されたシュトイデ弦楽四重奏団とのバルトーク「ルーマニア民俗舞曲」なども収録されている。
「『ブッダ』(手塚治虫)の映画化作品で出会った作曲家の大島ミチルさんに、シュトイデさんたちとの共演作の編曲などをお願いしました。改めて、人とのご縁に恵まれて、ここまでやってこられたのだと感じました」
 8月にサントリーホールで行われるデビュー15周年記念コンサートも、そんなこれまでの“出会い”の集大成。
「人の声にも似た尺八という楽器の特性が引き合わせてくれたからこそ実現したプログラム。今をときめく指揮者の山田和樹さんや、横浜シンフォニエッタという素晴らしいオーケストラとの共演が今からとても楽しみです」
 ゲストも「尺八とマリンバによる世界最小オーケストラ」でお馴染みの盟友・SINSKEを始め、大学時代の同級生で国内外で活躍している遠藤千晶(箏)、そして同じ2001年にCDデビューし、藤原とともに純邦楽シーンの“新しい波”として注目され続けている上妻宏光(三味線)など、実に多彩。
「目指す方向性に違いはありますが、皆さんとの共演により新たな尺八の音楽が広がってきました。特に、上妻さんは大きな存在で、彼がいたから自分も頑張れた。ご一緒すると、いつもいい意味で影響を受ける。今回のオーケストラとの共演とともにご期待下さい」
 映画『武士の一分』の音楽(冨田勲)から、黒澤明の名画をモティーフにしたゲームのための「Seven Samurai」(坂本龍一)、そして極めつけの名曲「ノヴェンバー・ステップス」(武満徹)と、魅力的な作品が揃う。
「とりわけ『ノヴェンバー・ステップス』は、06年のサントリーホール20周年記念フェスティバルのオープニングでも演奏した曲であり、初演時の鶴田錦史(琵琶)のお弟子さんである友吉鶴心さんとの共演なので、感慨もひとしおです」
 近年は、四代目市川猿之助のスーパー歌舞伎の音楽制作や吉永小百合の朗読アルバムの音楽監修も手掛ける他、Eテレ『にほんごであそぼ』のレギュラー出演と多忙を極める。5年後の20周年に向けて、広がり続ける藤原の活躍をワクワクしながら追いかけたい。
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年7月号から)

藤原道山 15th Anniversaryコンサート
8/24(月)18:30 サントリーホール
問:キョードー東京0570-550-799
http://www.dozan.jp

【CD】
藤原道山ソロデビュー15周年ベストアルバム『道』
日本コロムビア
COZQ-1031-2
¥3200+税(CD+DVD)